ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第23話「時の海鳴り」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第23話「時の海鳴り」考察ハードバージョン

シリーズ構成:赤星政尚、設定考証:谷崎あきら、脚本:太田 愛、監督・特技監督:アベ ユーイチ

メビウスマニアライターT2-0

郊外で頻発する謎の集団失踪事件…。この事件の調査のため、警察からGUYSに捜査協力が要請された。 事件発生時に奇妙な音が聞こえたとの証言があることから、鋭敏な聴覚を持つマリナ(斉川あい)に協力が求められたのだ。

トリヤマ補佐官(石井愃一)とマル補佐官秘書(まいど豊)は、これをGUYSの市民貢献として、快くマリナを送り出した。 基地のゲートには刑事・桐李(大浦龍宇一)が、マリナを迎えに来ていた。 その桐李に、マリナは不思議な懐かしさを感じるのだった。

マリナは、桐李と共に手がかりである「海鳴りの音」を探す。しかし捜査は難航していた。 捜査を通じ、打ち解けていく桐李とマリナ。休憩中の二人は自分の故郷について語リあった。

そしてマリナは自分の祖父について語った。忙しい両親に代わり、マリナたち兄弟の遊び相手になってくれた優しい祖父…。 しかしマリナには、祖父が亡くなって悲しんだという記憶がなかった。マリナは、その夏のことをよく覚えていないと言うのだ。「きっと子どもだったからですね」。マリナがそう言った次の瞬間、マリナの耳に海鳴りの音が届いた! そして、海鳴りの音に向けて駆け出した二人は、時空の歪みに踏み込んでしまった!!

その頃、ミライ(五十嵐隼士)は、基地の食堂でマリナの弟と会話していた。 基地で弟と会う約束をしていたマリナに頼まれていたのだ。

マリナの子供時代を「強い姉だった」と語るマリナの弟は、祖父が亡くなった夏の思い出も語ってくれた。 その夏のある夜、マリナが家から姿を消したことがあった。 翌朝、行き先を尋ねたところ、マリナは「ずっと寝ていた」「白い孔雀の夢を見た」と答えたというのだ…。

その時、ミライのメモリーディスプレイに、テッペイ(内野謙太)からの通信が入った。 桐李は偽の刑事であったというのだ!そしてマリナはグリーンタウンで消息を絶っていた!!

時空の歪みに入り込んだ桐李とマリナは、月光に照らされた田舎町に立っていた。 それは7年前・1999年のグリーンタウン…、団地が立ち並ぶ以前のその土地であった。

桐李は、驚くマリナに言った。これは、時を操る怪獣「クロノーム」の仕業であること、 クロノームは知的生命体の記憶を利用し、過去の時間に潜り込む能力を持っていること…。

桐李は続けた。「僕はクロノームに母星を滅ぼされ、地球に移住してきた地球外生命体なのです」。 その言葉に、トライガーショットの銃口を桐李に向けるマリナ。

桐李は、時間や記憶を破壊するクロノームの恐ろしさを語り、 この時間の何処かに捉えられているであろう人々を共に探すようマリナに呼びかけた。 「人間でなければ、信じてもらえませんか?」。桐李のその言葉に、マリナは銃を下ろす。

かつて桐李は、同胞と共に地球への移住を試みた。 しかし、地球まで到達できたのは彼一人であったのだ。悲しい過去を語った桐李は、マリナに言った。 「地球は僕の第二の母星です」と。

桐李とマリナは二手に別れ、行方不明者を探していた。 一方、超感覚で「時の継ぎ目」を感知したミライは桐李とマリナのいる世界への突入を果たし、桐李を発見していた。 桐李をアンヘル星人と看破したミライに、トーリ(桐李)は協力を求めた。

この世界は、マリナの失われた記憶につけ込んだクロノームの罠だったのだ。 クロノームの狙いはマリナであった。奴は、自分の居場所をサーチできるマリナを殺そうとしていたのだ!

マリナは、少女時代の自分に会っていた。 あの夏の日、祖父を失った少女時代のマリナは悲しみに沈んでいた。そこに、一人の男が声をかける。その男はトーリであった。「君の大切な人は君を置いていったんじゃない。いつだって君の側にいる」「悲しむのは弱いことじゃない。今は泣いていいんだ」。 そこにクロノームの咆哮が響いた!

「トーリが撃たれる!」マリナは遂に、少女時代の自分を助けてくれたのがトーリであることを思い出した。トーリと少女時代の自分を守るべく、トライガーショットで応戦するマリナ。 そこにウルトラマンメビウスも出現。クロノークとの戦闘が開始された!

少女時代のマリナの傷をハンカチで縛るトーリ。 少女時代の自分をトーリに任せ、メビウスを援護するマリナ。そのマリナをクロノームの火球が襲った! 火球がマリナに命中する寸前、飛翔してきた「白い孔雀」が自らの身を盾にマリナを救った。 トーリだ!!その様を少女時代のマリナははっきりと見ていた。

傷ついたトーリに近づく少女時代のマリナ…、そんなマリナにトーリは紙飛行機を差し出し、言った。 「これは夢なんだ。君は夢の外に帰らなきゃいけない。これを追って走り、そして着いたら全て忘れるんだ…」 その言葉に従い、少女時代のマリナは紙飛行機を追って駆け出した。

トーリに促されメビウスの支援に戻ったもう一人のマリナは、その聴覚でクロノームの弱点を感知。 一撃を加えていた。そして続くメビウスのメビュームシュートで、クロノームは粉砕された!

トーリの元に戻るマリナ。しかし、トーリの命は既に尽きていた。 トーリの死に涙するマリナ、そしてミライを時の継ぎ目が包む。クロノームの絶命と共に1999年の世界が消滅したのだ。ミライとマリナ、そして行方不明者たちは2006年のグリーンタウンに戻っていた。 そしてマリナはトーリを失った悲しみを抑え、GUYS隊員としての任務に戻るのだった。

翌日、マリナは、弟やミライと談笑していた。弟から荷物を受け取ったマリナは、荷物の中に一枚のハンカチを見つけた。 あの夜、トーリが少女時代のマリナの傷口を手当てしたときのものであった。 「私は大丈夫。会えなくても大切な人はそばにいてくれる」マリナは空を見上げ、心の中のトーリに語りかけるのだった。

ウルトラマニア考察

このところの「メビウス」は、毎回充実した内容で見せてくれていて、毎回本当に楽しみです。 今回の「時の海鳴り」も、太田愛さんらしい叙情的な一編となりました。

今回の見所としては、物語の構成の見事さをまず挙げたいと思います。 「マリナの弟の来訪」「初対面のマリナに手品で花を出す桐李」「桐李のカフスボタン」「紙飛行機」 「トーリのハンカチ」等が各場面を上手く繋いでおり、2006年と1999年の橋渡しとしての役割を果たしていました。

これらも含め、劇中の様々な描写やセリフが巧く連動しており、 無駄なセリフや場面がほとんどないことに感心させられます。

さて、今回の主役はマリナです!彼女の描写も光っていました。 先に述べたように、このエピソード内では様々な描写が連動していました。それに加えこの回では、以前のエピソードで描かれたマリナの特性を実に上手く説明しています。 マリナの、「精神的な強さ」「鋭敏な聴覚」「一流のライダー」といったキャラクター性の背景が今回のエピソードでは明かされました。

その描き方も違和感がなく、さすがだと思わせます。祖父との思い出として語られるその描写は、 視聴者の多くにとって納得のいくものであったはずです。 祖父の思い出のシーンに出てくるバイクがドゥカティ(マリナの愛車と同じメーカー)なのもいいですよね。 少女時代のマリナが習字で書いた文字が「強い心」っていうのも、マリナらしさが現れていました。

そうそう、少女時代のマリナを演じた小池彩夢さんは「ウルトラマンネクサス」で、山邑理子を演じた子ですよね(「Ep.14-悪魔-」「Ep.29-幽声-」)。「山邑理子」から2年、成長してちょっと印象が代わったかな? ついでに言うと、クロノームはネクサスのスペースビーストの改造?これについては後述しますね。

「ネクサス」繋がりでもう一つ。今回の監督さんのアベ ユーイチさんは、ネクサスを7本担当された阿部雄一監督!そう、 あのネクサスの最終回「絆」を担当された監督さんです!! メベウスベルトの「製作スタッフ・経歴・プロフィール紹介」でも紹介されていますが、同姓同名の演出家が存在するので、「アベ ユーイチ」と改名されたとのことです。アベ監督は「マックス」は撮られてないので、約一年ぶりのウルトラシリーズ登板となります。 ネクサス最終回に続き、今回も素晴らしい演出力を見せてくれました。今後のますますのご活躍を期待しております!

今回は戦闘シーンも美しく、魅了されました。 巨大な月をバックに反転するメビウスの美しさ! 日本家屋の立ち並ぶ田舎町のセットもなかなかです。

敢えて言えば、今回のストーリーの骨子はタイムスリップものとして見れば目新しいものではありません。さらに、ドラマ的にも結構ベタな感じなのですが…。なのに「やられた」って感じです。僕は今回のお話に、素直に感動させられてしまいました。 その理由は、 やはり各部分が凄く丁寧に作られていたためでしょう。磨かれたセリフ、美しい画面、俳優さんたちの演技…。 一つ一つの描写・シーンの積み重ねが見事に融合しており、今回も本当に素晴らしい一本に仕上がっていました。 少女時代のマリナの涙と、現在のマリナの涙。そして、彼女が求め、得た「強さ」。 ラスト近く、トーリを失った悲しみを抑え、GUYS隊員としての任務に戻るマリナ。エピソードのテーマを包括するようなこの場面には涙がこぼれました。

過去作品とのリンクポイント

@「地球は僕の、第二の母星です」。トーリのこの言葉は、おおとりゲン(ウルトラマンレオ)のセリフ「地球は僕の第二の故郷です」を思わせます。 母星を失い移住先を地球に求めたトーリ。その境遇は、ウルトラマンレオと極めて近いものです。 「レオ」では、モロボシ・ダンも地球を「第二の故郷」と表現しています。 軌道を離れたウルトラの星と地球が激突するかもしれないという危機的状況の下、M78星雲への帰還を勧めるウルトラマンキングに、モロボシ・ダンはこう言うのです。「地球は僕の第二の故郷です。もし地球がウルトラの星と衝突するときは、僕は地球とともに死にます!」 異星人である彼らがいかに地球を愛していたか…。それがうかがえるセリフです。

仲間を救うために自分のザイルを切った勇敢な地球人に感動し、地球防衛のため地球に留まったウルトラセブンことモロボシ・ダン。 第二の帰郷・地球を守るため、過酷な戦いに身を投じるウルトラマンレオことおおとりゲン。 そして、マリナの危機を身を挺して救ったトーリも、彼らと同じ気高い魂を持つ者、「仲間のためにザイルを切ることが出来る者」でした。

Aミライの透視能力の描写。目に白く十字が光るこの表現は「ウルトラセブン」でダンが透視能力を用いる際の表現と同じものです。 実は「セブン」の初期話では、ダンが透視能力を使う際は、目全体が白く光る描写が使われていました。 しかし、監修の円谷英二氏、円谷一監督から「ちょっと不気味に見えるのでは?」との意見が出され、以降は目に十字が光る表現に変更されたとのこと。 「ウルトラ」は、いろんな点で良質な番組を目指して製作されていました。そのようなことを改めて感じさせるエピソードです。

B過去作品との繋がりとはちょっと異なりますが…。 クロノームは、多分ネクサスのスペースビースト「ペドレオン」の改造ですよね。 アンヘル星人も、コスモスに登場した「グラルファン」の改造かな?

C「タイムスリップもの」はSFでは定番の題材ですが、ウルトラシリーズでは、これを扱った回は少ないかもしれません。 とりあえず思い出せるのが、ウルトラマンA第46話「タイムマシンを乗り越えろ!」でしょうか。 ティガ第49話「ウルトラの星」も過去と現在の繋がりがストーリ展開上重要な役割を果たしていました。 新しいところでは、ちょっとタイムスリップものとは違うけど、ウルトラマンマックス第37話「星座泥棒」もそうですね。 海外作品では、タイムスリップものとしては「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」が有名でしょうか。 そうそう、日本の怪獣映画では「ゴジラVSキングギドラ」が、タイムパラドックスをストーリーの中核に据えた作品ですね。

さて、大充実の今回に続き、次回予告のインパクトも凄いものがありました!また来週も楽しみですね(^^)/

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