ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第23話「時の海鳴り」レイゴ考察】

ウルトラマンメビウス 第23話「時の海鳴り」レイゴ考察ソフトバージョン

ウルトラマンメビウス・クロノーム怪獣画像
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とある町、人々は足早に行きかい、陸橋を通勤、通学する誰もが見慣れた朝の光景。 携帯電話で話す男は、相手に噛み付くように伝えた「まじ、この辺マンション出来る前、いたんだって、タ・ヌ・キ!」

男のすぐ後ろを歩く赤いランドセルの少女が 「私、小さい時この辺に田んぼあったの知ってるよ」一緒に通学する少女に笑いかけた。 相手の少女も楽しそうに「あ・・・私も、カエルとかいたんだよねー」 少女は驚いたように聞き返す。「え?そうなの?」 その時、不思議な音が聞こえ、人々は立ち止まる。

男が「海鳴りの音が聞こえる・・・」携帯の相手が「海鳴り・・・」そのまま男の携帯は使えなくなった。 少女たちも周りを見回す。「え・・・」「何?」

次の瞬間空間はいびつにゆがみ、田んぼの間を真っ直ぐ伸びる畦道に人々は唖然と立っていた。 カエルの声 ヒグラシの声がのどかに聞こえる。忽然と存在するタヌキの置物。

フェニックスネストでは、リュウがジョージにコブラツイストを仕掛けていた。 作業中のテッペイの側で、山のような荷物を抱えたミライがアゴで挟んでそれらを支えて立っていた。

マリナは怪訝そうに聞く「警察から捜査協力の要請?私に?」 リュウも不思議そうに尋ねる「マリナに?」 ジョージも続ける「捜査協力?」

サコミズがマリナの側に歩み寄ると 「最近、郊外で謎の集団失踪事件が相次いでいるんだ。警察は住民の不安を考えて、 事件を公表していないが、事件発生時に奇妙な音がしていたという証言があってね」 コノミが立ち上がる「あーーーそれでマリナさんの聴覚を頼ってきたわけですね」

トリヤマも大きく頷きながら「レッサーボガールが滅んだ今、怪獣出現の恐れは無い。GUYSもこれからは市民貢献の時代だ」 マルが案内する。「刑事さんがゲートに向かえに来ているそうです」サコミズがマリナに指を立てて合図を送って見せる。 マリナは出て行こうとしてふと足を止めた。

「あ・・・ごめん、ミライ君。今日、弟が家から私の荷物を持って来てくれるはずなんだよね。来たらさ・・・」 「任せてください」マリナはミライの肩をポンと叩く。

マリナがゲートに私服姿で姿を現すと、1人のサングラスをかけた男が立っていた。 男はサングラスをはずす。その顔を見たマリナ。 《どうしてそんな風に感じるのか、自分でもわからなかった》

マリナに向かって差し出された手、マリナが手を伸ばそうとすると男の手の中は、小さな蕾の淡いピンクの1厘のバラに変わった。 男は自分の所業にあら、とばかり焦って花を消し、慌てる。その姿に思わず笑うマリナ。 男はもう一度きちんと手を差し出す。

「桐李です」 マリナはにっこりと微笑んだ。「カザママリナです」

《ただ、懐かしいという思い、そしてそれが忘れられない一日の始まりだった》

公園の真ん中に立ち耳を済まして生活音の溢れる中、神経を集中させるマリナ。 マリナはため息混じりに「この場所も怪しい音は何も・・・それにしても海鳴りの音って一体・・・」額の汗を拭うマリナ。 桐李がマリナを覗き込む「少し休みましょう。疲れたでしょう?」 マリナはすかさず「あ・・・いえ、私は全然」 「私は?じゃ僕に付き合ってください」桐里はにっこり笑う。

クレープ屋さんの店員から「ありがとうございまーす」とクレープとジュースを受け取る二人。 桐李は両手にクレープを持ち、口の周りにクリームをつけて、二つのクレープをうまそうに交互にぱくつく。

マリナの手に持つ飲み物を貰おうと差し示すが、マリナは渡すマネをしてから、お預けのように一度ジュースを 持ち上げ、そして笑いながら桐李に手渡した。

桐李はジュースを傾けて飲む。その腕の輝くカフスにマリナの視線が届いた。 「あ・・・それ」不思議な形のあるカフスポタンだった。 「うん、これは僕が生まれた町の石です」桐李は自らのカフスを眺めながら話した。 「へぇ・・・」 「人の少ない、とっても小さな町で・・・あなたの生まれた町は?」桐李は口を拭いながらマリナに聞く。 「私?緑がいっぱいの田舎でした。今はこんな風にマンションが建ってますけどね」

外のテーブルとイスに座るマリナたちの足元にこどもの飛ばした紙飛行機が落ちた。 「ごめんなさーい」こどもたちが駆け寄ってきた。

マリナは「ちょっといい?」 「うん」その紙飛行機を拾い上げると 「ここをね、もうちょっとこうやるわけ。わかる?見ててね、行くよ・・・」 マリナが風に乗せて飛ばした紙飛行機はスーーット美しい直線を描いて飛んでいった。

少年たちは「わぁ・・・」と歓喜の声を上げて紙飛行機を追いかける。 マリナは優しく「バイバイ」と手を振った。 桐李は「すごいなぁ・・・」感心することしきりだ。 マリナは桐李を振り返ると「子どもの頃、祖父に教えてもらったんです」

「祖父は、忙しかった両親の代わりに、よく私と弟たちの遊び相手をしてくれて・・・ 『耳を澄ませて梢の音を聞けば、風の流れがわかる』祖父はそう言って、 同じ風の流れを読んで、紙飛行機の飛んでいく先で待っていてくれた。

その年の夏に亡くなるまで、祖父は私たちの一番の友達だったんです。 なのに、不思議と亡くなってひどく悲しんだ記憶が無くて・・・」 遠くを見つめるように話すマリナにその時「え?」桐李が聞き返した。 「私、その夏の事あまりよく覚えてないんです。きっと子どもだったからですね」マリナは微笑んで桐李を振り返った。

その時マリナは異変を感じた。 「聞こえる・・・海鳴りの音」 二人はあの陸橋まで走りこむ。

次の瞬間やはり空間はぐにゃりとひんまがった。

「ここは一体・・・こちらマリナ。応答願います、応答願います」忽然と現れた田んぼに囲まれた畦道。マリナは慌てて基地に 通信を試みるが不可能であった。

桐李が電柱に貼られてる立て看板を見つけた。蒼白い大きな月の真下にたつ二人。 杉の木町の夏祭り楯穂沼花火大会1999年8月15日日曜日19時30分から 真夏の夜空を彩る大輪の花々・・そう書かれた看板に桐李が手で触れた。

「7年前の日付だ・・・」 「どういう事?」 「ここは7年前の過去の時間なんです。おそらくここに団地が建つ以前の・・・。間違いない・・クロノームの仕業だ」 「クロノーム?」 「時を操る怪獣です。奴は知性体を捕らえ、その記憶を利用して過去の時間にもぐりこみます」 「あなたは一体何者なの?」

ソフトクリームを1つ店員がミライたちのテーブルに届ける「ソフトお待ちどうさまーー」 マリナの弟はその姿に「超ー可愛い!」と嬉しそうだ。

ミライが続ける「で、さっきの話の続きなんですけど・・・」 「あぁ、姉貴の子どもの頃の事ね。まぁ俺の知ってる限り、最強。泣いたの見たこと無いし。 じいちゃんが死んだ夏だって、俺らが凹んでいると自転車とか教えてくれて、何気超ストロングなの」

ミライは笑う「マリナさんらしいなぁ・・・」 「そういやその夏、夜中に目覚ましたら、姉貴の布団が空っぽだった時があってね」 「夜中にどこ行ってたんです?」 「って、俺も朝起きて聞いたのよ。そしたら姉貴ずっと寝てたって。んで、白い孔雀の夢見たって」

その時ミライのメモリーディスプレイの呼び出し音が二人の会話を止めた。 「はい、ミライです」 デスプレイにテッペイの顔が映った。

「大変です!マリナさんを連れて行った刑事は偽者の刑事だったんです。今、本物がゲートに」 「何ですって!?それでマリナさんは!?」 「それがグリーンタウンでぷっつり反応が消えていて・・・」

「僕はこの星に移住して来た、地球外生命体です。」桐李の意外な言葉にトライガーショットを向けるマリナ。 「クロノームはかつて、僕の母星を滅ぼした怪獣です。奴がなぜ、地球に現れたかわからない。 しかし、クロノームを倒さなければ、時間や記憶がメチャメチャにされてしまう。」

「とにかく消えた人々を探さなければ。彼らはこの時間のどこかに、閉じ込められているはずです。・・・・ 人間でなければ、信じてもらえませんか・・・?」見詰め合う二人。マリナは銃を下ろした。

「一つだけ、教えて。移住して来た、あなたの仲間たちは?」 4つの赤い球が次々消えたった一つの球が地球にたどりついた。 「この星にたどり着く事が出来たのは、僕一人です。地球は僕の第2の母星です」

「消えた人たちはどこかにいるはずです。手分けして探しましょう。」桐李がマ リナに訴えかける。 マリナは黙って肯き、2人は2方向へ散った。

ちょうどその頃ミライは、マリナや人々の姿の消えた陸橋の上にいた。 「この近くに・・・」ピカッとミライは瞳を瞬かせ、スキャニングする 。 と、突然前方の空間に空気の波紋のようなものが現れた。 「時の継ぎ目だ!」

[強い心]と力強い毛筆で書かれた書道作品が神社の掲示板に貼られているのを桐李が見つけた。 [杉ノ木小学校六年 風間マリナ]と署名されている。 地域のこども書道展で、[希望][夢]と書かれた作品を圧して金賞を穫ったマ リナの作品である。 「まさか、この時間は・・・!?」桐李は、何かに気が付き驚愕の表情で周 囲を見回す。

---「あたし、その夏のこと、あまりよく覚えていないんです。」--- それは今日の昼間にマリナが言っていた言葉だ。

「いけない!」 そう言った矢先、「アンヘル星人!」と、後ろから呼びかけられた。 ミライが厳しい顔つきで、ツカツカと歩み寄ってきた。 「ウルトラマンメビウス!」桐李は動揺した。

「いったい何が起こっているんです。マリナさんはどこに?」 やや強い口調で訴え、桐李の前に立ったミライ。 「捕まったんだ。彼女が!」桐李は叫んだ。 「えっ?」

時空の狭間でカラフルな怪獣がうごめいている。

透明ガラスにヒマワリの描かれた風鈴が、涼やかな音を奏でる。 その音に誘われるように近づいたマリナは、とある納屋付き漆喰の大きな門前に 立っていた。

「ここは・・・あたしの子どもの頃の・・・」 茅葺き屋根で広い縁側のある旧家の庭先にゆっくり歩み寄ってみると、3台の子ど も自転車、[おじいちゃん][まりな]の名札のある朝顔の鉢、座布団の上にパ ナマ帽、DUCATIのバイク。

---あの夏だ---

おじいちゃんのオレンジと黒のドゥカティのシートにまたがる笑顔のマリナ。 おじいちゃんはマリナを支えながら、口で「ブルルーン」と走る真似をして笑う 。

「僕も乗せて!」「いいよ。」2人の弟たちも寄ってきて、笑顔でその頭を撫でる おじいちゃん。 マリナは「手を離してみるよ、一回」「大丈夫?」と声を掛け、下の弟の自転車 乗りの補助をする。ヒマワリが咲いている。

縁側に4人並んで腰掛け、かき氷を食べる。 竹を組んだ縁台の上には、たらいに水を張りスイカが冷やしてある。 竹竿にぶら下げられた虫取り籠、縁側の蚊遣り豚。

「どのへんがいいかなぁ?」すいかに包丁を入れ、切り分けてくれる甚平姿 のおじいちゃん。 マリナと一緒にバイクの計器の針の振れ方を教えてくれた祖父。

あの習字も、この縁側で書いた。 [強い心]書き終えると、おじいちゃんが「いいねぇ」とマリナの頭を撫で褒め てくれた。 夜になると浴衣を着込んで花火をした。赤や緑に照らされる思い出の庭。

そして・・優しい笑顔をたたえた祖父の遺影。

その頃ミライと桐李は、必死にマリナを探し回っていた。 『マリナさんの過去の時間?』 『ああ。クロノームは、彼女の欠落した記憶につけ込んで、この過去の時間 に引き込んだんだ。ヤツの居場所をサーチできる、邪魔者を消去する為に。』

茅葺き屋根の民家の連なる、緑の田んぼの長閑な風景とはおよそ不釣り合いに、2 人は切迫した勢いでマリナを探し回る。

ガラガラッ 戸板の開く音がしたかと思うと、パジャマ姿の少女が家から飛び出してきた。 驚くマリナに気付くことなく、目前を駆け足で通り過ぎる。

チャリーーン 時間怪獣モノクロームが、その時を待っていた。

ミライがついにマリナの生家を探し当てた。 少女とすれ違ったが、急いでその先で立ちつくすマリナの元へ。 「マリナさん、無事だったんですね。」 「ミライくん。今の、子どもの頃のあたしだった・・・」

『子どもの頃の彼女が!?』ミライとマリナのやりとりを察知した桐李が、テレ パシーで頭の中に呼びかけてくる。 『メビウス、クロノームの狙いはその子だ!その子が消されたら、今の彼女も消 えてしまう!』

「マリナさん、思い出してください。この夜、どこへ行ったんです?こんな真夜中にたった一人で」 マリナは欠落した記憶の糸を辿る。

---『置いてかないで・・・』 マリナが飛ばす紙ヒコーキが飛んで行く先には、いつも笑顔の祖父が待っていて 、落下する前にキャッチしてくれていた。

マリナが飛ばした紙飛行機は受け取る主がそこにはもういない。 浮力を失った紙ヒコーキは、力無く緑の野原に落ちる。 少女時代のマリナが立ちつくす周囲には、おびただしい数の白い紙ヒコーキが散 らばっている。

祖父への届かぬ想いを乗せたひとつひとつの紙ヒコーキが、行き場を失い、月の 光に青白く反射する。

シロツメクサとクローバーの絨毯に、少女マリナは膝を揃え座り込み顔を伏せ る。 『置いてかないで・・・』

「マリナ」 優しく囁きかける声に驚き振り向くと、スーツ姿の男性が穏やかな笑顔でこちら を見ている。

男性はマリナの側に腰を下ろした。 キラリーーン 男性の指の間から、蕾から開き始めたばかりの淡いピンクのバラが現れた。

「桐李!」大人のマリナは、既に自分の記憶の中の世界に混在していた。

少女マリナは黙ってバラを受け取った。 「マリナ、君の大切な人は、君を置いて行ったんじゃない。いつだって君の傍に いる。」 「でも、それがわかるまで、みんなとても悲しくて、たくさんの時間がかかるん だ。悲しむことは弱いことじゃない。だから今は、いっぱい泣いていいんだ。」

それまで無表情だった少女マリナは、「うううっ・・・」とうめき、やがて嗚咽 となる。 随分泣かないように我慢していたのか、堰を切ったように、涙がとめどなく溢れ頬 を伝う。

「約束したんだ。強い人になるって。」 桐李は穏やかな笑顔のまま、黙って少女の髪を撫でた。 少女は自ら立ち上がって、しゃがんだ桐李の首筋に腕を巻き付け、そして静かに 泣きじゃくった。桐李も黙って少女を優しく抱きしめた。

その時、光の粒子がオレンジの光の帯となり、閃光と共に怪獣が姿を現した! ミライとマリナは顔を見合わせ前に進み出る。

少女を抱きしめたまま、桐李も怪獣を見上げる。

「白いクジャク!」不意にマリナの脳裏に白い羽根を持つ生命体に姿がよぎる。 「・・・はっ!桐李が撃たれる!!」 叫んだかと思うや否や、駆けだした。 「マリナさん!」ミライも追いかける。

「あたしは悲しくてどうしていいか分からなかったんだ。」 「助けてくれたのは桐李。そんな大事なこと、私はどうして忘れていたのか!? 」 マリナは全力疾走で怪獣の後を追う。

桐李が少女の手をとり逃げる後ろを、クロノームが追いかける。 カタツムリのような形状だが、地面に触れる部分の歩行器官がおそろしく発達し ているらしい。 歩みを止めたクロノーム。 頭部の2本の触覚の先端に光の粒子が集まり、赤く発光し光線を放つ。 2本の赤い光は途中で一つにまとまり、大きな火球となり少女を襲う。

桐李は少女に覆い被さるように、怪獣との間に自らの身体を差し出し、大人のマ リナはその近くでトライガーショットを構え、火球に向かって撃つ。 マリナの防御は火球に命中したものの、そのエネルギーの大きさに身体ははじけ 飛んだ。

「あぁぁっ!」地面に叩き付けられたが直ぐに、少女の方を見る。 少女を抱いたまま、桐李の身体が衝撃吸収してくれ、少女マリナは無事なようだ 。

モノクロームが再び近付こうとする。しかし、その鼻っ面をキックする赤い影。 巨大な月を背景に、身体をねじりウルトラCを決め、メビウス登場!

「ウルトラマンメビウス!」マリナは嬉しさと安堵感で大きな声をあげた。 頷くメビウス。 蒼い夜のとばりの中、メビウスとクロノームの接近戦が始まった。

マリナが桐李と少女のもとへ駆け寄る。 「大丈夫。気を失ってるだけだから。」芝生に腰を降ろし、上体を起こした姿勢 の少女の肩を桐李が支える。 少女は右肘を負傷していた。 桐李が手際よく白いハンカチで傷口を覆う

「間に合った・・・」マリナは安堵した笑顔で桐李と見つめ合い、桐李は黙って 肯いた。 ハンカチの隅に鳥のような模様が描かれていた。

メビウスはジャンプしてクロノームの頭上を越え、背後に回る。 キックしたメビウスの足が、怪獣の背中央にパックリ開いた部分に挟み込まれて しまう。 メリメリと粘性の高い部位に取られた足は、なかなか外れない。

何とか脱却しようともがき、勢い余り弾き飛ばされた。 怪獣は身体下部から、白い煙を吐き出し始める。 両手に当たる部分から触角が伸びたが、煙は分厚い煙幕を作り、その中に忽然と 姿を消した。 掴みかかったメビウスの腕が空を切る。

白煙が消え、澄みきった空気の戻った月夜に照らされる山あいの田園をキョロキ ョロと、怪獣の姿を探すメビウス。 神社の鳥居や水車小屋のある風景に、静かに風が渡っている。

と突然、クロノームの長い触手がムチのように唸りながらメビウスに迫って来た 。 最初の一撃はかわしたものの、別の方向から迫る触手がメビウスの背中を激しく 打ち、赤い閃光が走る! 二度、三度と四方八方からムチが飛んで来て、メビウスは背中を強く打ち付け地 面に転がる。

ズゥゥーーン  ズン  ズン・・・・ 音だけは聞こえるのだが、姿は見えない。 メビウスは見えない敵に身構える。

木の幹に眠る少女の身体を預け、その横で成り行きを見守る桐李とマリナ。 「ここにいて!あたしはメビウスを援護する。」 トライガーショットを構え、立ち上がったマリナは続ける。 「クロノームを倒して現在に戻ったら、桐李の生まれた星の話を聞かせて。」 「わかった。」深く頷きマリナを見送る桐李。

メビウスの元へ走る途中で、マリナは地面に光るものを見つけた。 『これは僕の生まれた町の石です。』 昼間、桐李が見せてくれたカフスだった。 「これ、桐李の星の・・・」

  拾い上げたマリナの背後に白煙が立ちこめクロノームが姿を現した。 しかしマリナは全く気付いていなかった。

クロノームの触手が光り、まさに今、大人のマリナに向かって攻撃を仕掛けよう としていた。桐李が、それを見て走り出す 。 大きくジャンプし両手を後ろ手に揃えると、桐李の身体は白い翼を持つ本来のア ンヘル星人の姿に変身を遂げた。 虹色に輝く白い翼を拡げ、神々しいその姿で精一杯の羽を広げ、マリナの盾となる。

トーリーは腹部で赤い火球をまともに喰らった。 マリナから見えるトーリの白い背中の向こうでは、辺り一面が真っ赤に染まり、 赤い閃光が走り、白いトーリの羽根が舞い散っている。

マリナだけでなく、目を覚ました少女マリナも見ていた。 少女は大きく目を見開いて、天使と悪魔の狂気絵図をただ為す術もなく見つめて いた。

メビウスがクロノームに向けて、猛ダッシュする。 地面に落ちたトーリは、人間体の姿になり、息も絶え絶えに目を見開く。 「トーリーーー!!」マリナが桐李の元へ駆け寄ろうとする。

すかさず第2砲を繰り出そうとするクロノームだったが、メビウスが掴みかかり、 すんでのところで阻止した。

木の幹に座位で上体を預ける桐李。 「桐李!」泣きだしそうな声でマリナは叫ぶ。 「行くんだ!行ってメビウスと共にクロノームを倒すんだ。海鳴りの音を消すん だ!」 語気を荒げて桐李が言う。 「待ってて」マリナは決意すると、頬笑む桐李を残して走った。

〜その脇で、その様子を少女マリナが見守っている。 桐李は左手を少女の方へそっと差し出した。 「怖がらなくていい。これは夢なんだ。」 「夢?」 「君は夢の外に帰らなきゃいけない。」桐李は手を降ろし、話を続ける〜

銃を構えたマリナは、林の間をひた走っている。 木々の切れ間から、クロノームと闘い苦戦するメビウスの姿が見えてきた。

〜「だから、これを追って走るんだ。」紙ヒコーキを差し出す桐李。 「そして着いたら・・・みんな忘れるんだ。」笑顔の桐李を少女はじっと見つめ る〜

クロノームの触手を巻き付けられたメビウスは激しく地面に叩き付けられ、カラ ータイマーが鳴り出した。

〜「だいじょうぶだ。君は、強い人になる。僕は知ってる。」 佇んだままの少女を、桐李は語りかける〜

トライガー・ロングショットの射程範囲に到達したマリナは銃を構え、目を閉じ る。 クロノームの身体全体から発せられる種々の音を聞き分ける。

海鳴りの聞こえるポイントを聞き分けた。 「そこだーーーっ!」攻撃の最初に光を集める、2本の花弁を拡げたような触手部 だった。 2発連続発射で、正確に2本の触手をマリナは破壊した。

〜少女は真っ直ぐに飛ぶ紙ヒコーキを追い、走り続けている。 「さようなら。マリナ・・・」 桐李の身体を光の粒子が包んでいく・・・〜

マリナの援護を受け、 ダメージを与えたクロノームの頭部にメビュームショットを浴びせる。 瞬時にクロノームは大爆発を起こした。

マリナは桐李の元へ急ぎ戻ったが、しかし彼の命は今まさに燃え尽きようとして いた。 穏やかな頬笑みを称えたまま、桐李の身体全体を白い光の粒子になった。 そして光が散った後には、あの淡いピンクの可憐なバラが1本残された。

マリナは花を拾い上げ、しゃがんだまま、声に出さずに泣いた。 ひと滴の涙が、桐李のいなくなった地面にこぼれ落ちた。

時の継ぎ目が現れ、マリナは現代へ戻って来た。 ひざまずいたままの姿勢で、マリナは陸橋にいた。 「マリナさん・・・」後方からミライがそっとマリナに声を掛ける。

「あれは?」 ミライの向かう先には人々がいた。 ランドセルを背負った小学生、サラリーマン・・・クロノームの仕業で行方不明 になった人たちが、時を超えて帰って来たのだった。 「大丈夫ですか?・・・大丈夫?」

マリナは涙を拭くと立ち上がった。 そして振り向き、戻ってきた人々の救済に「大丈夫ですかー」駆け寄るのだった。

「はい、荷物!」マリナは階段下で弟から荷物で膨れたオレンジのキャリー付き バッグを受け取った。

「ありがと。」 「昨日はアネキがさらわれたんじゃないかって、チョー焦ったんだから。」 「ごめんね、心配かけたね。」 「まぁ、アネキは最強だから、あまり心配してなかったけどね。」 「えっ!?」

側にいたミライがすっとんきょうな声をあげる。 「でも、マリナさんに何かあったら僕をシメルって・・・」 「言ってない、言ってない、言ってない・・・」 「言ったじゃないですか・・・」 2人でエンドレスの押し問答している隙に、マリナは荷物の中から綺麗な缶を取り だした。

中に入っていたのは・・・ 隅に見覚えのあるマークの描かれた白いハンカチひとつ。

「これ・・・」手に取ってみる。 「あぁ、それ、アネキ、大事にしてたろう。」 「あの夜の桐李の・・・」 「マリナさん・・・」ミライが心配そうにマリナの側に来る。 「大丈夫よ。」

---私は大丈夫。会えなくても大切な人は傍にいてくれる。 子どもの頃、あなたがそう教えてくれた。 桐李、忘れない--- マリナは笑顔で大空を見上げる。

紙ヒコーキが青い空に舞い、高く高く昇って行った・・・。

管理人のここが考察ポイント

自分と異質な生命体、自分の知らない存在。太田 愛さんの世界はこのような異質な生命体やまだ見ぬ世界 (多くの人に周知されていない)との出会いと別れをテーマに取り扱うことが多い。

小学校の国語の教科書に載っている「ごんぎつね」的 主題を持っている。ゴンは一方的に、猟師に想いを伝えたかったが、 自分の死を持ってしか、事実と本当の想いを猟師に伝えることができなかった。

この作品は、この上なく美しく、幻想的でそして、ある種残酷なアンデルセン童話のように、 ファンタジーの中に壮絶な死が共存されていた。

そうならないように後悔させたくないという強い想いから、 信じよう、想いを気づいて、受け取ろうと訴え続けているのではないだろうか。

また、仮に予測ができたとしても、その結果が回避できず最悪な事態にならないとも限らない。 誰にも結局変えることができないものもある。 そうなった時、それをどう受け止めて生きていくか。人の生きていく強さとはなんであろうか。

短い時間とはいえ、マリナとトーリに 共同戦士としての友情が芽生えたことは確かである。例えその先にあったものが悲しすぎる現実だったとしてもだ。

触れることができなくても存在している。目に見えなくても心の目で見る。聞こえなくても心で感じよう。 マリナの強さは、マリナ自身が強くありたいという願いから生まれたものだった。

人の生きていく強さとは決して、涙を見せないことではない。大切な人を失った時、人は泣くことすらできなくなる。 愛する祖父の死というマリナの悲しみを受け止めてくれるトーリという器が合ったことが、 泣きながらでもマリナが、人の命というものを正面から受け止めることができたのだ。

正面から受け止めることによって、きっと 大切なその存在を忘れずに 未来を目指して、前進できる。その輝きをきっと大切な人は側で見ていてくれる。

紙飛行機は円谷英二の夢を形どった一つの象徴に使われるが、その紙飛行機に、それぞれの想いを乗せて、直線を描いて、 飛ぶさまを少女が真っ直ぐに 追う姿に真の強さを感じた。素晴らしい演出に拍手を贈りたい。

ウルトラマンメビウス 第23話「時の海鳴り」

時間怪獣 クロノーム / アンヘル星人 登場 

《キャスト》ヒビノ ミライ 五十嵐隼士 / アイハラ リュウ 仁科克基 / カザ マ マリナ 斉川あい / イカルガ ジョージ 渡辺大輔 / アマガイ コノミ 平田 弥里 / クゼ テッペイ 内野謙太 / サコミズ シンゴ 田中 実 / トリヤマ補佐 官 石井愃一 / マル補佐官秘書 まいど 豊 / 桐李(トーリ) 大浦龍宇一 / 少 女時代のマリナ 小池彩夢 / チャーリィ湯谷 / 小野健人 / 神宮政宏 / 渡邉裕 太 / 森 朝子 / 扇田拓也 / 伊藤梨沙子 / 村瀬綾夏 / 田畑菜々子 / 下江昌也 / 田川颯眞 / 小倉祟昭 / 吉川元和 / 深井順子 / 滝沢麻衣

《スーツアクター》和田三四郎 / 永田朋裕 / 太田智美

《シリーズ構成》赤星政尚 《設定考証》谷崎あきら 《脚本》太田 愛 《監督 ・特技監督》アベ ユーイチ 《監督》小原直樹 《監修・製作》円谷一夫 《製 作統括》大岡新一 《企画》岡崎剛之 / 江藤直行 / 中村理一郎 《プロデュー サー》岩佐芳弘 / 渋谷浩康 / 山西太平 《制作プロデューサー》小山信行 《 アソシエイトプロデューサー》小掛慎太郎 《ラインプロデューサー》中井光夫  《音楽プロデューサー》玉川 静 《音楽》佐橋俊彦

=本編スタッフ=

《撮影》高橋義仁 《照明》佐藤才輔 《美術》内田哲也 《録音》楠本龍巳  《操演》上田健一 《助監督》黒木浩介 《装飾》遠藤雄一郎 《衣装》塚田亜 矢子 《メイク》今井志保 《車両》野口茂樹 《製作主任》戸村祥章 《編集 》前鳶健治 《VFX》田代定三 《デジタルエディター》柳生俊一 《VE》佐々木 彰司 《スクリプター》島貫育子 《キャスティング》小島文夫

=特技スタッフ=

《撮影》新井 毅 《照明》高野和男 《美術》佐々木朋哉 《操演》根岸 泉  《殺陣》岡野弘之 《助監督》日暮大幹 《スクリプター》島貫育子 《スチー ル》橋本賢司 《制作主任》菊池英次 《キャラクターデザイン》丸山 浩 《キ ャラクターデザイン・イメージボード》酉澤安施 《キャラクターメンテナンス 》宮川秀男 《タイトルデザイン》佐藤さい子 《仕上げ》鶴田幸伸 《CGIモー ションディレクター》板野一郎 / 円谷CGI-ROOM 《CGIスーパーバイザー》早川哲 司 《CGIディレクター》祖父江成則 《CGIデザイナー》大坪隆史仁 / 上田和彦 /

小嶋律史 / 森 裕二 / 小杉淑美 《CGIマネージャー》小田達哉 《CGI協力》水 石 徹 / 三宅 仁 《エフェクトコーディネート》小野寺 浩 《エフェクトアニ メーター》増田英和 《デジタルマットアート》有働武史 《カラリスト》高田 淳 《音響効果》古谷友二 《編曲》池田地香子 《整音》松本能紀 《MD担当 》福井 顕 / 須賀久子 《催事宣伝》古池啓一 / 大野まゆみ / 菅野悦子 《製作 デスク》石渡牧子 《番組宣伝》重松和世 / 橋本栄次 / 太田小由美 / 堀川勝一 / 武藤博昭

《協力》松下電器産業 / ドゥカティジャパン / フィアット オート ジャパン / クリエイティブ・オフィス ヤップ / 銀座サクラヤ / プログレッシブ / キャン ・インターナショナル / 日本照明 / 東宝ビルト / 東宝コスチューム / 開米プ ロダクション / 亀甲船 / スワラプロ / スリーエススタジオ / 富士通乾電池 / ヒルマモデルクラフト / ハルジン / グレイショコラ / 宗特機 / コダック / ム ーンスター / 日本エフェクトセンター / IMAGICA / クレッセント / Adobe Systems / Autodesk / ボーンデジタル / D.A.S.T / スタジオ・バックホーン / パンチライン / RECARO / 岡村製作所 / ナナオ / 宮田工業 / レイト商会 / K2JAPAN / 富士グローブ / CASIO / KENNETH COLE / Zoff

《撮影強力》ディッパーダンカフェ 多摩センター店 / UR賃貸 多摩ニュータウン 長峰・杜の一番街 / 長峰・杜の三番街 / さがみ湖ピクニックランド / 千葉県フ ィルムコミッション / 千葉県立房総のむら / 千葉県教育委員会 / 穴澤天神社 / 味の素スタジアム / 稲城中央公園 / 日野自動車21世紀センター

《制作協力》電通  《製作著作》中部日本放送 /円谷プロダクション  《提供》セイカ/BANDAI

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