ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第29話「別れの日」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第29話「別れの日」ハードバージョン

監督:佐野智樹、特技監督:鈴木健二、脚本:赤星政尚

メビウスマニアライターT2-0

金色の光があふれる空間…。そこにはウルトラの父とウルトラの母、そしてメビウスがいた。 ウルトラの父はメビウスを光の国へ帰還させようとしていたのだ。 ウルトラの父と母はメビウスに告げた。地球に途方もない脅威が迫りつつあること、そのために兄弟の一人を地球に向かわせていることを。 「今の君が臨めば命を落とすのは確実だ」。ウルトラの父の言葉を聞いてなお、地球に留まり戦うことを希望するメビウスを、ウルトラの父は叱責する。

基地の作戦室で沈痛な表情を浮かべるミライ(五十嵐隼士)。その胸には、隊員一人ひとりの面影が去来していた。 そんなミライの傍らにいたサコミズ(田中実)は、ミライの肩にそっと手を置くのだった。

ある朝、自宅で朝食のテーブルについたテッペイ(内野謙太)。その食卓に出されたのはカレーライスだった。 「朝からカレーだなんて…」、そうつぶやくテッペイは、カレーを運んできた人物を見て仰天する。それはミライだったのだ。 「テッペイさんにご馳走しようと思って覚えたんです!」。苦笑いするテッペイに、ミライは手作りのお守りを手渡した。 「立派なお医者さんになってくださいね」。ミライのその言葉に困惑しながらも、テッペイはミライに礼を言うのだった。

コノミ(平田弥里)が勤めていた保育園。そこには園児たちと遊ぶミライの姿があった。そんなミライを見て「私より先生らしかった」と と感心するコノミ。「勉強したんです。コノミさんを手伝おうと思って」、そう言ったミライは、コノミに手作りのお守りを渡した。

GUYSの任務に就きながら、オートバイ世界グランプリの優勝のため努力を続けるマリナ(斉川あい)、そしてサッカー・スペインリーグへの復帰を目指すジョージ(渡辺大輔)。 それぞれの夢を目指す彼らのもとを訪れたミライは、激励の言葉と共に、彼らにお守りを送るのだった。 そんなミライの行動は、隊員たちの間でも話題になっていた。「ミライくん、GUYS辞めちゃうのかも!?」そのコノミの言葉に、表情を曇らせるリュウ(仁科克基)。

そして翌日、ミライは非番のリュウを誘って外出していた。 リュウはミライに訊ねた。「お前、GUYSを辞めるつもりじゃねぇよな?」、深刻な表情のミライに事情を聴こうとするリュウ。 その時!突如市街地に巨大なロボットが出現した!! 街を破壊しはじめたロボットに対し、ジョージとマリナがガンフェニックスで出撃する。 そして、その場を立ち去ろうとするミライをリュウが呼び止める。「俺たちGUYSが逃げ出したら、誰が地球を救えるんだ!?」。その言葉にミライは答えるのだった。「僕が救います!」と。 ロボットの光線を受け、撃墜されるガンフェニックス!

ミライは、リュウに感謝の言葉を述べ、そして言った。「見ていてください、僕の最後の戦いを!」 眩い光に包まれるミライ!次の瞬間、そこにはガンフェニックスを救ったウルトラマンメビウスが立っていた!! そして、メビウスと視線を交わしたリュウは呟くのだった。「ミライが…?」

ロボットに立ち向かうメビウス!しかし、ロボットは強敵であった。必殺技メビュームシュートの直撃に耐え、なおも侵攻を続けるロボット! メビウスブレイブにチェンジしたメビウスは、メビュームナイトブレードでロボットの右腕を切断する!しかし、ロボットの腕は刃上に変形し、修復されてしまった!

追い詰められるメビウス、絶体絶命だ! と、その時、上空から放たれた一条の光線がロボットに命中した。そして、紅の戦士が地上に降り立つ!それはウルトラマンタロウであった!! 帰還命令を無視したメビウスを咎めたタロウは、メビウスに光の国への帰還を命じた。タロウの言葉に「僕はまだ戦えます」と答えるメビウス。 しかし、その言葉を最後に、力尽きたメビウスの姿は消滅するのだった。 メビウスに代わり、ロボットに挑むタロウ!その攻撃は鮮やかであった。華麗に宙を舞い、高空からスワローキックを放つタロウ!! そしてロボットは激闘の末、タロウのストリウム光線により撃破されるのだった。

地上では、廃墟と化した街でリュウがミライの名を叫んでいた。 自分が、未熟な戦いを罵倒したウルトラマンメビウス…。そして、いつも自分が助けてきたつもりだったミライ。 そのメビウスはミライだったのだ…。ミライへの想いを胸に、リュウは懸命にミライを探していた。 そしてリュウは、瓦礫の中に横たわるミライを遂に発見した。生死も定かでないミライを抱え、リュウは悲痛な叫びをあげる。 「ミライ、死ぬなーッ!」、その時、リュウとミライの頭上に瓦礫がなだれ落ちてきた! 

ウルトラマニア考察

シリーズのターニングポイントになることが特撮雑誌等でも告知され、ファンの期待も高かった第29話「別れの日」。そのサブタイトルと、予告で流れたウルトラマンタロウの姿に、今回はいつも以上に放送が待ち遠しく感じられた回でした。 そして実際の作品は、その期待を裏切らない、いや、それを上回る仕上がりでした。

まずは冒頭のウルトラの父・母、そしてメビウスの会話からいきなり盛り上がります。この場面から、ここ数回で提示されていた不穏な空気が少しずつ明らかになっていきます。そしてウルトラの父の忠告、「今の君が臨めば、命を落とすことは確実だ」との言葉が緊迫感を高めます。 続いての作戦室のミライとサコミズのシーンも印象に残ります。 今回はサコミズ隊長は、明らかにいつもと違っていました。インペライザーの出現から少しの間をおき、「無理はするな」と言った上で下される出撃命令。メビウスの出現に、マル、トリヤマ、ミサキが喜んでいたときも、サコミズは一人心配そうな表情を浮かべていました。 サコミズは、あの作戦室でミライから何かを聞いていたのでしょうか?

今回は、様々な要素がたっぷり含まれていました。にも関わらず無駄な場面やセリフが全くなく、ストーリーがよどみなく進行していくのには感心させられます。各場面もとても丁寧に撮られており、本当に感情移入しながら見てしまいました。 その中でも感動させられるのがミライが変身を決意する場面です。 その盛り上がりの素晴らしさ!過去にウルトラマンが正体を明かすシーンはいくつかありましたが、その中でも出色の出来です。 「僕が救います!」、そして、リュウに述べた感謝の言葉と「見ていてください、僕の最後の戦いを!!」 リュウの目前、光に包まれるミライ!そして出現したメビウスと視線を交わすリュウ…。この時のメビウスは表情すら感じさせてくれました。 この場面はウルトラ史に残る名場面になることと思います。

ミライが変身を決意する場面の直前、赤い風船が空に舞います。これは第1話とのシンクロを意図したものでしょうね。 この直前のシーンは、後述しますが過去のシリーズのオマージュ的な演出がなされていました。 そしてそのシーンに続けて映される「赤い風船」は、第一話で見られた、ミライの優しさの象徴であると同時に、メビウスと地球人との繋がりの象徴でもあります。 このカットが入ることで、ミライの決意がより鮮烈なものになっていました。

ミライが、仲間の一人ひとりにお守りを渡すシーンは、ミライの変身シーンをより深いものにしています。特に、サンドイッチをリュウに振舞う場面は微笑ましくも泣かせてくれました。 「ミライがリュウを、大切な人間だと思っていること」「人間を理解するよう努め、意識して知識を得ているであろうこと」が伺える場面ですし、「大切な人とはこうして二人きりで過ごすものだって…」のセリフ、その認識が微妙に外れている辺りがミライらしくてイイですよね。ミライ、お前ってホントにいいヤツだよ(/_;) これに続く、リュウがミライに事情をたずねる場面、リュウがいつもの荒い口調ではなく、穏やかに事情を尋ねてくれたのも嬉しかったです。 「いつも荒っぽいリュウだけど、ホントは優しいヤツなんだよな」そう思わせてくれる場面でした。

全体的に重い展開の中、タロウの登場と戦いぶりはカタルシスを感じさせるものでした。上空からのインペライザーへの一撃に続き、地上に降り立つタロウの勇姿!そして、佐橋氏による「ウルトラ兄弟のテーマ」のブリッジ曲に続いて高らかに鳴り響くタロウのテーマ!! 宙空に舞ったタロウのアクロバティックな動き、そして高空から繰り出すスワローキックのカッコいいこと! 空中で回転する際の効果音も当時のものが使用されており、「ストリウム光線!」の掛け声およびエフェクトの相乗効果もあって、昭和ウルトラのファンを感涙させてくれました。ストリウム光線の破壊力の描写もグッドですし、上半身を吹き飛ばされたインペライザーに対して最後まで警戒を解かないあたりもいいです。 第二期ウルトラシリーズでは、客演したウルトラ兄弟は、現役ヒーローの引き立て役的な位置づけとして扱われることがありました。 現役のヒーローを強く描くために仕方のない措置だったのでしょうが、過去のウルトラマンのファンにとってはやや辛い演出もあったのも確かです。 今回、タロウはタロウらしく、メビウスはメビウスらしく、両者の魅力を損なうことなく描かれていたのは特筆すべきことです。 スタッフの、それぞれのウルトラマンへの愛情を感じさせる素晴らしい演出がなされていたと思います。

今回は、初出の音楽が多用されていたのが印象的です。また、劇場版でも聞かれた音楽「ウルトラ兄弟のテーマ」の使用も効果的でした。 「メビウス・ソングコレクション」を購入された方はご存知でしょうが、この「ウルトラ兄弟のテーマ」には、佐橋氏作曲による歌”HEROS”と同一のメロディが用いられています。ウルトラヒーローの誇りを歌った”HEROS”、こちらもカッコいい曲です。未聴の方は是非聴いてみてください。

インペライザーはロボットらしい強さと不気味さが存分に描写されており、強敵としての貫禄充分です。 今回は、逃げ惑う人々や瓦礫と化した街など、怪獣の足元で生じた事態が強調されていました。このような惨状は、普段は描かれない(映されない)のでしょうが、これらはインペライザーの猛威を強調するため、今回、敢えて挿入された場面なのでしょうね。 オープニングの登場怪獣の影絵は最近凝ったものが続いています。今回のインペライザーの影絵も良いですよ。

歴代ウルトラマンシリーズとのリンク部分

@ウルトラマンタロウの声を担当されたのは石丸博也さん。アニメ「マジンガーZ」の兜甲児やジャッキー・チェンの声を担当していることで知られる石丸さんは、1984年の映画「ウルトラマン物語」でもタロウの声を担当されました。 今回の起用はこれを踏まえてのことです。石丸さんは、公開中の映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」でもタロウの声を演じられています。  一方、「メビウス」でウルトラの母の声を担当されている池田昌子さんは、同じく「ウルトラマン物語」でもウルトラの母の声を担当されています。お二人がそろってタロウと母を演じられるのは、実に二十数年ぶりのこととなるのです。 今回はタロウとウルトラの母が会話するシーンはありませんでしたが、今後の展開で見ることが(聞くことが?)できるかもしれませんね。

少々マニア的知識になりますが、石丸さんは、ウルトラマンレオ第40話「MAC全滅!円盤は生物だった!」にも、学校の先生役で出演されています。

A今回、タロウは赤い球体になって地球に飛来しました。これはウルトラマン第一話「ウルトラ作戦第一号」の描写を踏まえたものでしょう。 ウルトラマン第一話で「赤い球体」の姿で地球に飛来したM78星雲の宇宙人は、科学特捜隊のハヤタ隊員が操縦するビートル機と接触事故を起こしてしまいます。そして、ハヤタの命を奪ったことに責任を感じた「彼」は、ハヤタと一身同体になり、地球の平和のために戦う決意をするのです。 この回のラストのハヤタのセリフは、様々な推測ができる内容となっており興味深いです。「ウルトラマン」の名がハヤタの命名によるものなのか、M78星雲の宇宙人の意志によるものなのか釈然としないあたりは、今でもマニアの間では話題になります。 また、この中でハヤタは「彼(ウルトラマン)は、自分の乗ってきた宇宙船(赤い球体)が壊れてしまったんだ」という内容のことを言っています。 ウルトラ戦士が赤い球体になって飛行する描写は、ウルトラシリーズ内では「ウルトラマン」のみで見られたもので、今回は40年ぶりの描写となります。 久々に登場した、この「赤い球体」の描写に、今後何らかの解釈が示されるのか、気になるところです(予測では、赤い球体の姿で飛行するのは「エネルギーを温存するため」または「超高速航行をするため」といったあたりでしょうか?)。

Bウルトラの父の命令に背き、変身するミライ。それは、逃げ惑う人々や仲間の危機を目の当りにして決意されたものでした。 この描写はウルトラセブン第48話「史上最大の侵略・前編」を彷彿とさせます。この時のモロボシ・ダンは、パンドンのために危機に陥ったウルトラ警備隊の隊員たちを救うため変身します。 この時、セブンと同じ姿のM78星雲人による「待てッ、変身してはいかん!」というセリフがカットバックされるのですが、そのタイミングや、そして何より「してはならない変身」をしてしまうシチュエーションが、今回とほぼ同一です。 今回のミライ隊員の変身シーンは、この時のダンの変身を意識して演出されているものと思われます。

劇場版メビウスや、今回の「別れの日」を観て確信できること…、それはメビウスのスタッフが、メビウスへの深い愛情と過去の作品への敬意をもって製作に当ってくれているであろうということです。 21世紀に入った今、こんなワクワクできる「ウルトラ」を観れること、「ウルトラマンのファンでよかった」と思わせてくれることを本当に嬉しく思います。 このような作品を送り出してくれる円谷プロとそのスタッフの皆さんに心から感謝したいです。 これから「メビウス」がどのような展開を見せるのか予想ができませんが、決して我々の期待を裏切らないであろうことを信じています。 僕はこれからもメビウスを応援しますよ!頑張れ、メビウス!!

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