ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第32話「怪獣使いの遺産」レイゴ考察】

ウルトラマンメビウス 第32話「怪獣使いの遺産」レイゴ考察ソフトバージョン

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サイレンの音。工場の音。ウルトラセブンのBGM「ノンマルトのテーマ」(M74)をアレンジしたものが流れ、そして 蜩の声、日没までいくらかの時間を残した夕焼けの河原。

一人の少年が汗を流し、首から白いタオルを下げ。 スコップ1本で大きな穴を掘っていた。その穴はいくつもあり、 穴は小さい車なら落ち込みそうなほどの、人が一人で掘るにはとてつもなく、 大きなものだった。

『その人は不思議な人でした。ピアノのレッスンに出掛けた帰り道、近くの土手を通るたびに、 いつも姿を見かけました。・・・ 一体何故なのでしょう?その人は広い河原のあちこちを、一生懸命掘り返しているのです』

薄いブルーのワンピースの少女は、穴の入り口にしゃがむと「お兄ちゃん、なんでこんな所を掘っているの?」 穴の中に埋まって掘っている少年を覗き込み、声をかけた。

「円盤を探しているんだよ」少年は額の汗を拭うこともなく少女を見上げてそういった。 「円盤?」 「えー・・・つまりUFO!宇宙人の乗物」少年はすこし笑うと、こともなげに付け加えた。

「あき子ー!あき子ー!」 「ほら、お母さんが呼んでるよ」日傘をかたむけて、白い服の少女の母親が、少女を遠くから呼んでいた。 少女は無言で立ち上がると、バイバイと手を振って、呼ばれる母についていった。

母親は少女と手をつなぎながら「あの人に近づいちゃダメよ」 「なんで?」 「あの人、なんでも宇宙人らしいって噂よ。昔、仲間と一緒にこのあたりに住んでたんですって。 怖いわねぇ・・・宇宙人だなんて」 「宇宙人だとどうして怖いの?・・・ねぇ、どうして?」少女の母親は少女のどうしてには、答えはしなかった。

《ALERT》薄暗い司令室。 ミサキの姿がスクリーンに映し出された。「GUYSスペーシーより、緊急連絡です。今より40分前、 一機の未確認飛行物体の地球接近が確認されました。現状のコースで降下すれば、 日本時間午前9時47分に、タクマ山中に到達する見込みです」

コノミが驚く「タクマ山中・・・?そんなぁ・・・」 マリナが「どうしたの?コノミちゃん」と聞く。 「今日、保育園の子どもたちがタクマ山の麓のピクニックランドに、遠足に行ってるんです」コノミは心配そうにそう告げた。

タクマ山の麓、園児が謎の飛行物体に顔を上げる「園長先生、あれなぁに?」揃って見上げる 園児の「怪獣かなぁ?」の質問に 「怪獣だったら、コノミ先生がやっつけてくれるよ!」と別の園児がすぐさま答える。

着地した円盤は、丸みを帯びた金色の菱形で、表面は鱗状にひび割れ模様があり、 丸く膨らんだ上下はブルーで大きく膨らんだ下部には、かすかに生物が見える。

ガイズスペーシー内に警報が鳴る。 サコミズが号令をかける「GUYS Sally Go!」 一同は声を揃える「GIG!」

テッペイが解析の結果を告げる「宇宙船内部に、大型生物の生体反応確認」その言葉に トリヤマが確認する「つまり、この宇宙船の中に」と画面を指差し「怪獣が積んであるという事なのかね?」引き続き円盤を スキャニングしながら テッペイは「そういう事になりますが、特に動いている様子が確認出来ません。一種の冬眠状態のようです」と説明する。

ガンウィンガー に機上のリュウは 「やっぱし、物騒なもん積んでやがったか・・・隊長!攻撃許可を!」と指示を仰ぐ。

サコミズが「宇宙船側の目的がわからない限り、うかつな事は出来ない」と慎重な態度を打ち出すと、 リュウは「なにのんきな事言ってるんですか!?強引に侵入してきた上に、 怪獣まで積んでるんですよ!侵略目的に決まってるじゃないですか!」 と不服そうだ。

黙ってやりとりを聞いていたミライの耳に 『違う・・・我らに侵略の意思は無い』 ミライはハッとして「リュウさん!今テレパシーが・・・」 「テレパシー?」リュウはミライに聞き返す。

ミライは問う『君は誰だ?』 『私はメイツ星人、ビオだ』 「メイツ星人」ミライは声に出して復唱する。

トリヤマは、熊のようにのしのし歩きながら「怪獣を連れてくるような連中が、信用できるのかね! つまり・・あっ!怪獣で武装しているという事じゃないか!」引き返そうと、くるりと振り向き、 ピッタリと後についてきていた マルにぶつかり慌てる。 サコミズは静かに「武装なら、我々もしていますよ」と答えた。

トリヤマがしろもどろに「いや・・・まぁそういう事じゃなくて、私が言いたいのはね・・・」 すると、マルが毅然と「平和的な宇宙人なら、怪獣など連れて来ないだろう!」とあとをついで言い放ち、 「・・・という事ですよね?」腰を引いてトリヤマに伺いを立てる。

トリヤマ「お・・・おぅ・・・」は大きく頷く。 サコミズは重ねて、辛抱強く「とにかく歩み寄ってみなければ、何も始まらないでしょう」優しく話す。

ガンフェニックスは2機に分離する。 ガイズの戦闘機が園児たちの視野に入った「GUYS、がんばれーーー!!」 子ども達は口々にガイズに声援を送る。

ガンウィンガーを着陸させると、テレパシーの主を捜索するために二手に分かれたリュウとミライ。 鳥が鋭く鳴いた。森の中に忽然と現れた宇宙人。

真っ白い顔、黒い虚無僧のような衣服。黒い髪はおかっぱのように額あたりで揃えて、 目はひし形のようで大きくまぶたはない。

鼻の位置も不明瞭で、顔の半分を占めるような口は、開くとさらに大きく横に広がって、口の端が吊りあがっている。 人間体の形を残しながら、それとは異形の容姿は、ギョットするものがあった。

「君がウルトラマンメビウスか?待ちたまえ」銃を構えたミライにビオは手で押しとどめる。 「どうして君は私に銃を向ける必要があるんだ?私たちは敵同士なのか?」

ミライは銃を下ろし脇のホルダーにしまった。 ミライは「メイツ星人、君が地球に来た目的は何だ?」と聞く。

「地球と友好を結ぶ事だ。我々は地球人と仲良くしたい」 「それならば、なぜ怪獣を連れて来るんだ?」

「君がいるからだよ、メビウス。宇宙警備隊員の強さは私も知っているつもりだよ。 その君が地球人の味方をしているんだ。我々も万一のために、味方を連れて来たいと思うのはいけないかね?」

「けれど地球人はその怪獣を武器だと考えている」 「我々にとっては、君も地球人の武器なんだよ。 無論、我々も無益な争いをしようとは思っていない。 君が介入しなければ、ゾアムルチを覚醒させる事はない」

「ゾアムルチ・・・・本当に友好が目的なんだな?」 「もちろんだ・・・ただし、地球人と握手をする前に、 どうして解決しておかなくてはならない問題がある。私はその交渉のために来た」 「解決しなくてはならない問題って?」

「今から30年ほど前、一人のメイツ星人が気象観測のためにこの地球を訪れたことがあった。」 メイツ星人は、雨が降り注ぐ中よろよろと粗末な置き小屋を探し当てた。

「しかし、この星の大気汚染が予想値をはるかに超えていたために、 彼は深刻な病に侵されてしまったのだ。体力の消耗が激しく、 彼は隠しておいた宇宙船を起動する力さえ失ってしまった。やむを得ず彼は、 地球人の姿になって身を潜め、体力を取り戻そうと試みた」

白髪の人間の姿になっていたメイツ星人は必死に「待ってくれ!待ってくれ!待ってくれ!」詰め寄る住人に叫び続ける。 銃を構えた警官の手は震え、そしてメイツ星人に向かって発砲された。 メイツ星人は倒れ彼の背面からは、じわりと血が流れそれは広がり、地面を染めた。

「しかし、彼が宇宙人だと知った一部の地球人が恐怖のあまり、 彼を殺害してしまったのだ。無断で地球へ入り込んだ我らにも、確かに非はある。 けれど、命を奪われるほどの何を・・・彼がしたと言うのか!」ビオは苦しそうにミライから一度視線をはずす 「・・・メビウス、これは我らメイツ星と地球との問題だ」そしてミライをもう一度見ていった。

ミライは頷いた「わかった。君が怪獣を暴れさせることなく、 平和的に地球人と話し合うと言うのなら、僕は手を出さない」 「約束するかね?」

ビオがミライに歩みよったその時。 ビオは「うっ!!」声を上げた。

「大丈夫か!?ミライ!」ミライが振り返ると、リュウの撃った弾道の先に、手からおびただしい血を滴らしめたビオがいた。 「見たまえ、メビウス!地球人は自分たちと異なるものを、すぐに敵と考える」 ビオはミライの前をすり抜けるようにその場を後にした。

トリヤマは「そもそも、今報告があったような事件が、本当にあったのかね!?」 と尋ねる。コノミが「ドキュメントMATに、補足説明がついています。メイツ星人が地球人の少年と生活していた小屋に、 地域住民が大挙して押しかけ、同行した警官が発砲したようです」と報告する。 マルが「なんと悲劇的な事でしょう・・・」嘆く。

その時テッペイが「でも、なんとなくわかりますよ・・・・いやあの普通、 いきなり目の前に宇宙人が現れたら、誰だって怖いと思うんですよ。 いい宇宙人か悪い宇宙人かなんて、見ただけじゃわかんないわけだし」

テッペイの言葉に立ち上がるサコミズ「だから、勇気を持って話し合うことが大切なんだ。話し合ってお互い知ろうとしなければ」 コノミが「園長先生・・・園長先生がいつも、隊長と同じことを言ってました」とそっと伝えた。

「こんな野蛮な連中に、まともな話合いなどできるものか!」ビオは憤り、宇宙 船へ向け右腕を差し出し、パワーを送る。 木立の中から宇宙船がゆっくり浮上し始めた。

「まずい!宇宙船が北見市に向かっているぞ!」警告画面を 見て、トリヤマが叫ぶ。 「住民に避難確保を。」「GIG!」サコミズの指示にマルが動く。

地図画面を示していたモニターにメイツ星人ビオの姿が映し出された。はっとして緊張が走る ディレクションルーム。 「地球人の諸君、我々は改めて命を奪われた同朋の賠償を要求する。 地球の大陸部の、20パーセントを我々に割譲せよ。」

「そんなこと、出来るわけないだろがー!」トリヤマが大声を出す。 「ならば、こちらのやり方でやらせてもらうまでだ。」 ビオの姿はフッとモニターから消えた。 宇宙船は移動を続けている。

「どうするんだね、サコミズ隊長!?」詰め寄るトリヤマ。 サコミズは静かにスクッと立ち上がる。

「三十数年前の出来事は、二度とは起こってはならない悲劇です。無知と恐れが 生み出した、不幸な事件と言えるでしょう。」 「我々は、自らの過ちを知り、改めなければらりません。ですが、いま危機に晒 されている人々を守ることが、GUYSの使命であることにも変わりありません。」 「全くその通りだ!」

「ジョージ、マリナ、メテオール解禁!宇宙船の侵攻を食い止める んだ!」「GIG!」 「リュウとミライは、メイツ星人の身柄を確保。お互いに武器を捨てて、もう一 度話し合おうと説得するんだ!」「GIG!」

ガンローダーは、宇宙船の下部から発射される光線を、高速移動で避けながら追 尾する。 「ブリンガーファン・ターンオン!」 二本の竜巻状の烈風に挟み込まれるように、宇宙船は錐揉み状態で弾き飛ばされ る。

「こざかしい!」 ビオが右手を差し出すと、地表近くで宇宙船の揺れが止まり、落下を免れた。 「そんな!」マリナは声をあげ、ジョージは宇宙船の追尾を続ける。

ビオは、苦しげに負傷した左腕を押さえながら、建造物の柱の 陰に腰を降ろした。

「みんな、こっちよ、おいで。」「はい!」 誰かが近づいてくる。 気配に次の瞬間、ビオは人間の男の姿に姿を変えた。

「早くバスに戻って、ここから離れないと。」 みやま保育園の保育士と園児たちのようだ。 「先生、さっきのがあんなところに!」 男の子の指差した先に、ガンローダーと一戦を交える宇宙船が見えた。

「駄目だわ。こっちは危険!」 園児たちの歩みを制した時、うずくまる男を見つけた。男の左腕からは、 緑色の液体が流れ落ちている。

「先生。あのおじさんケガしてる。」 女の子が心配そうに保育士に訴える。 「この人、人間じゃない。きっと宇宙人だわ。」 引きつった顔で若い保育士が言う。

「でも先生、宇宙人でもケガをしたら痛いよ。」 「ミイコちゃん、やめなさい。」 保育士の制止を聞かず、女の子はスタスタと男の方へ歩いて行く。

「はい、おじさん!」笑顔でポケットからきちん折った黄色のハンカチを両手で真っ直ぐに差し出した。 男が女の子を見上げると、女の子は満面の笑顔で自分を見つめている。

すると「はい、おじさん!」 次々に子どもたちが、男の元へ近づくと、ハン カチを差し出す。

男は驚いたような表情で、黙って子どもたちの顔を見回す。

「ミイコちゃん、立派よ。ほんとにあなたが言った通り、宇宙人だって怪我をし たら痛いのよ。」 それまで後方で成り行きを見守っていた園長先生が進み出て、しゃがんでミイコ のハンカチにそっと手を伸ばす。

そしてそれを受け取ると、一旦開き両端から中央へと折り目を付け、そして黙っ て男の怪我した患部にあてがう。

「行けーーーっ!」空中戦のさなかのジョージが額に汗し叫びながらビームを発 射。 しかし、宇宙船からすぐに反撃され、避けながら後退する。

「みんな、離れるんだ。」リュウとミライが園児たちの元へ駆けつけ、メイツ星 人からみんなを引き離そうと誘導する。 リュウがトライガーショットをメイツ星人に向けた状態で、ミライが語りかける 。

「ビオさん、もうやめてください。地球人とメイツ星人は、きっと仲良くするこ とが出来ます。お互いに武器を捨て、何度でも話し合いましょう。今すぐ宇宙船 を止めてください!」

男は、座り込んだまま、ミライの顔を見据えて、無言でンンーーッパワーを込め、右手を 空にかざした。

宇宙船は、それが合図であるかのように民家に向かい光線連続攻撃を始め、数カ所で爆 破が起きた。

「我らの痛みを知るがいい。地球人どもめ。」 宇宙船は破壊光線を撒き散らし、赤い爆発の炎をマーキングするように移動を続 ける。

「何と言うことを!」 メインライトの消えた薄暗いディレクションルームで、トリヤマがワナワナと震 えながらモニターを見つめる。 「住民の避難は完了していますが。」 「それでも被害は甚大だ。」

これは、地球とメイツ星との問題…僕はどうすればいいんだ…・・・ミライ はメイツ星人を睨みながら、叩き付けられた言葉を反復していた。時を刻む音が響く。

「ミライ。何やってる。街が大変なことになってるんだぞ。」リュウは語気を強 くしてミライに訴える。 ハッとしてミライはリュウを振り向き、黙ってひとつ肯いた。 時間は刻一刻と流れている。

皆の元を離れ、ミライが黙って左腕をかざすと、メビウスブレスが光った。 宇宙船が攻撃を続ける現場へ空中一回転して降り立つ。

「邪魔するのか、メビウス!」メイツ星人が立ち上がって叫ぶ。 宇宙船の中で何者かの大きな赤い目が開いた。

続いて地上へ照射された光線の中から、怪獣のようなものが現れた。 尖った口先にするどい牙、頭頂から背中に魚類のヒレが連続するボディ。 メビウスと対峙するや否や、口から光線を吐き、メビウスは側転して避ける。

「怪獣を止めろ!」銃口を向けたまま、リュウがメイツ星人に訴える。 「ハハハ・・・」高笑いする男。

「撃てばいい。野蛮で暴力的な地球人め。ゾアムルチは私の脳波と同調している 。私の怒りと憎しみがある限り、決して破壊と戦いをやめないぞ。」 メビウスとゾアムルチは接近戦を展開している。

「お前、そんなに地球人が憎いのか。」 「ああ、憎いね。」 「仲間の復讐か?」 「仲間・・・仲間以上だ。殺されたメイツ星人は…」 男はリュウをふり向きキッと見据え、低くしかし強い語気で語る。 「私の父だ!」

リュウは無言で、構えていた銃を降ろした。 「どうした、撃たないのか。」 「必ず勝ってくれるさ。」

メビウスはゾアムルチの足蹴りを受け、苦戦していた。 「宇宙警備隊員もたいしたことないな。地球人の味方などするから、あんな目に 遭うのだ。」男は口の端を吊り上げて不敵に笑った。 メビウスとゾアムルチの戦いは続いていた。

その時、 「あなたメイツ星の人・・・?」 先ほど傷の手当てをした女性が、ゆっくりと男に近づいて来た、男は振り向い た。 「30年前に地球にいたのは、あなたのお父様!?」 「それがどうかしたのか…」

「あぁぁっ、お会いしたかったわ!」更に1歩前に歩み寄ると女性の声は、喜びの感動に 満ち、その表情には笑顔が溢れた。 「会いたかった?」怪訝そうな男。

「お兄さんが言ってたわ。メイツ星の人は、本当に心が優しいって。」 「一体何の話をしているんだ?お兄さんというのは、誰のことだ?」

女性の表情が一瞬曇る。 「ご存じないの?あなたのお父様は、こちらにいる間、地球人の少年と二人で暮 らしていたのよ。身寄りを亡くして、独りぼっちだった少年と。」 「あたしが出会った頃、その少年は、少し大きなお兄さんになっていたの。」

---河原で着物姿の初老の男性が引っ張る、ボロボロの番傘を差した大八車を押す 少年。 隙間だらけのボロ家で、ブロックで囲った簡単な囲炉裏に鍋を掛け、野菜を調理 する男と少年。鍋の蓋を開けると湯気が立ち、少年と男は幸せそうな笑顔を見せ る---

「そのお兄さんに聞いたのよ、二人で、とても楽しい時間を過ごしていたことを 。」 ---『おじさん、おいしいね』『良くんのおかげだよ』汁碗を持ち、二人でニコニ コと食する。

『おじさん、円盤まだかなあ。』はしごを掛けた大きな穴の底でスコップで掘る 少年。それを温かく見守る男。

ヒマワリの咲く暑い夏の午後、小屋の前に陸上げされた舟で昼寝する少年。その 傍らで赤い塗りの団扇でゆっくり風を送ってやる男。男は穏やかで満ち足りた表 情をしていた---

「多分、お父様は、もう自分の星に帰れないことを覚悟なさっていたのね。だか ら、きっとあなたの面影をお兄さんに見て、一緒に過ごしていたのよ。」

---『へぇ、僕も行ってみたいなぁ』満天の星空の下、二人並んで男の星について 語り合う。

そして・・・雨の中、地面に倒れ動かない男の身体を必死で揺する少年。 『おじさん!起きて、おじさん!おじさん・・・・・』うつむき、泣き濡れる少 年・・・---

---『円盤が出てきたらどうするの?』河原で穴を掘り続ける、少し成長した少年 に尋ねる少女。

『メイツ星の行くんだよ。』 少年は手を休め、立ち上がった。

『おじさんは言ってたんだ。いつかメイツ星人と地球人が、手を取り合って仲良 く出来る日が必ず来るって。だから俺、一足先にメイツ星に行ってみたいんだ。 そしておじさんの仲間たちと握手するんだよ。』 夕映えの中、屈託のない笑顔で語る少年の言葉に、少女は数度肯いた---

「私は、その言葉に感銘を受けました。違う星の人間同士でも、心を通わせるこ とが出来るのだと、教えられたんです。いつの頃からか、ほかの人にも、その言 葉を伝えたいと思うようになって、今では保育園の園長ですわ。」 そう言って園児たちを振り返った。あどけない表情の子どもたち。

「あなたのお父様が、地球人の少年に残した、愛情と言う遺産は、私の園の子ど もたちが、しっかり受け継いでいます。この子たちが大きくなる頃、この星はき っと、今より、優しくなっているでしょう。」

「この星が・・・今より優しくなるだって?」メイツ星人は左腕の傷口を押さえ ながら考える。

---『はい、おじさん』屈託のない笑顔で、自分にハンカチを差し出してくれた女 の子---

メビウスとゾアムルチの戦いは、まだ続いている。

「なぁ」リュウは銃をしまいながら、 「俺が言えた義理じゃねえのはわかってる。けど、もういっぺんだけ、地球人を 信じてみてくんねえか。」と言葉をかける。

「私の…父の…遺産…」 男の深い哀しみを表すかのように、雷鳴が轟き、激しい雨が降り出した。 メイツ星人は、雨の中に進み出ると身を置いた。

降りしきる雨の中、メビウスとゾアムルチは、お互いの体力を消耗するような取 っ組み合いを続けていた。 メビウスがゾアムルチを背負い投げする。

雨に混じり、男の涙がこぼれ落ちているようだった。 「やっぱり・・・駄目なのかよ。」リュウがつぶやき、園長先生は男の 背中をじっと見つめる。

「ああっ・・・駄目なんだ・・・」目をつぶったまま顔を空に向けた男が、首を 振りながら言い、その場に崩れるように腰を落とした。地面に両腕を付き、這い 蹲る。

「もう一度、地球人を信じてみようと言う気持ちが起こっているのに、すぐに憎 しみが止められないんだ!」 男は激しく一度、地面を拳で叩いた。

「父のことを想うと・・・どうしても!」 おもむろに顔を上げた。

「お願いだ!私の憎しみを消し去ってくれ、ウルトラマンメビウス!」

涙を雨で隠しながら、魂の叫びを絞り出すような男の声が聞こえたかのように、 メビウスはゾアムルチと距離を置いた。

口から光線を吐くゾアムルチ。 白く激しい火花は散ったが、白煙の中からメビウスが凛々しい姿を現した。

そして、暗く重たい戦いの終結をしめすかのように、放ったメビュームシュート。

ゾアムルチの腹に命中し、数度のスパークが走る。 倒れたゾアムルチは大爆発を起こした。

雨は、叩きつけるように容赦なく降りしきる。 メビウスにも、伏している男の背の上にも・・・そして町にも。

青空に雨あがりの虹が浮かんだ、海を見下ろす高台の公園。 リュウとミライに背中を向けた男が、穏やかな景色を見つめている。 「なかなか、美しいものだな。」男の言葉に、リュウとミライが顔を見合わせ頬 笑む。

男が二人に向き直った。 「私はそろそろ戻ることにするよ。」 「そうっか。」リュウは一歩前に進み出て、「じゃあ・・・」右手を男に差し出 すが、男は黙って首を横に振った。

「握手は・・・」左袖を少しめくり、黄色いハンカチを確かめるように見た。 「父の遺産の咲かせた花を見届けてからにしよう。」 穏やかに男は言い、黙って2、3度肯くリュウ。ミライは少し後方で笑顔でそれを 見守る。

男は二人に向かい軽く右手を掲げ、そして背を向け、ふわりと自身の身体を空中 に浮かばせる。 男はみるみるうちに宇宙船へ吸い込まれ、あっと言う間に跡形もなく空へ消えて 行った。

安閑とした入り江の虹の景色が暮れなずみ、夜のとばりが降りた。 夕暮れ ---その人の姿は、いつの間にか見えなくなっていました。 病気で亡くなったとも、長い旅に出たとも聞きましたが、はっきりしたことはわ かりません。

けれど、私の中には、燃え上がるような夕焼けの中で、どこか楽しそうに穴を掘る続けて いるあの人の姿が、今も消えずに残っているのです---

管理人のここが考察ポイント

本作品は、帰ってきたウルトラマン第33話「怪獣使いの少年」(脚本上原正三 監督東條昭平)の続編として制作されたということであるが、 今回のポイントは、 我々地球人は、メイツ星人との友好成立のチャンスを未来に託したということだ。

30年数年ぶりに地球を訪れたメイツ星人。友好を結びたいというその目的は、同時に、 過去の地球人が起こした同胞の殺害に対して、 地球人がその問題をどうとらえているのか、 それを賠償(与えた損害をつぐなうこと)として考えているかという 問題の提起でもあった。

話が現行の賠償問題に及ぶと賠償義務、賠償責任や賠償能力等に話が波及するが、 これは講和条約を結んで、論じる問題であるため、講和条約を結べなかったメイツ星人との間では成立はしない。

では地球人がこれらの問題をどう思っているか、つまりメイツ星人が言う、解決しなければならないという心情的問題は、 どうなったかという点であるが、 誤認とはいえ、メイツ星人に発砲してしまったリュウが詫びなかったという点を考慮すると、 本当の意味の解決は、しなかったと言わざる得ない。

帰りマンの「少年と怪獣使い」を見たこどもたちは、あの当時から今までどう思ってきたのだろう。 もし、当時の住人が仮にここに存在していたら、 単純に少年良やメイツ星人に謝りたかったのではないだろうか

地球人は元々、好戦的で排他的な要素があるからとか、 日頃宇宙からの侵略の脅威にさらされ、攻撃が最大の防御的発想だったからとか、 不法侵入や未知のものへの恐怖。 それらの釈明はあれ、

あの押しかけた群衆心理を自分だったらと置き換えたとしたら、 結果的には、ただそこに存在していただけの無抵抗の宇宙人をことの末路とはいえ、抹殺したことに対しては、 パン屋のおねいさんのように優しい言葉をかけることができなかったとしても、 たった一言「すまなかった」とそれだけは、彼らにいいたかったのではないだろうか。

それを言えるチャンスがあったのは今回リュウ だった。しかしリュウはそれをしなかった。我々地球人は、1つの暴力については、詫びるチャンスを逸したわけである。 と、同時にそれは、地球人はメイツ星人にいつか伝えたい想いを捨てることなく、 その気持ちを忘れることなく、その想いを持ち続けられる ということにもなる。

ウルトラマンを武器と発言したメイツ星人の言葉は悲しいものであった。 人間の意識が投影され、形どったものが「ウルトラマン」だとするならば、 メイツ星人から見れば、地球人にとってはかけがえのないの友であり、守護神のようなウルトラマンは、 「地球人の武器」であるという認識であったというわけだ。

しかしそのメイツ星人がこどもたちが差し出した無条件の優しさの前にはじめて、躊躇した。

犬死のように思われたビオの父親の殺害されたメイツ星人は、優しさと愛情の遺産を地球のこどもたちに残していた。 もう一度地球人を信じてくれ、この星はもっときっと未来は、優しくなる。その言葉に、地球人を信じようとしたビオ。

しかし、ビオの憎悪は簡単に消せるものではなかった、そして、 地球人の武器といい放ったウルトラマンにすがったビオ。「お願いだ!私の憎しみを消し去ってくれ、 ウルトラマンメビウス」
それはウルトラマンは武器ではなかったということをビオが認めたことでもある。

ウルトラマンとは明日を創る、「未来のために破壊する存在」であるということをだ。

ビオと地球の未来のために怒りと、憎しみの結晶怪獣ムルチを破壊したウルトラマンメビウス。 遺産が花を咲かしたことを確認してから握手をすると去って行ったメイツ星人ビオ。

それは、託された未来への可能性への挑戦が、今から始まったことを意味している。

今ここにいる我々ができることは、勇気を持って誰かと対話する心、相手を知ろうと歩み寄る努力。 相手の痛み、苦しみを知り相互理解に努めること、相手に優しくなれること、 慈愛と本当の勇気と心の強さが必要ということである。

今はまだ、未熟な星だけれど、いつの日かきっと、メイツ星人と握手が交わせる。 優しい星、そんな未来の地球を目指して、希望を持ち 突き進もうという願いがこめられていた。

演出部分には、オマージュをふんだんに織り込んだ、静かながら製作者の熱い想いのこもった1作であった。 この「怪獣使いと少年」に注がれた制作者の想いは、願いとなって、消えた良少年の行く末を物語っているかもしれない。

ウルトラマンメビウス 第32話「怪獣使いの遺産」

巨大魚怪獣 ゾアムルチ / 宇宙調査員 メイツ星人 ビオ 登場 

《キャスト》ヒビノ ミライ 五十嵐隼士 / アイハラ リュウ 仁科克基 / カザ マ マリナ 斉川あい / イカルガ ジョージ 渡辺大輔 / アマガイ コノミ 平田 弥里 / クゼ テッペイ 内野謙太 / サコミズ シンゴ 田中 実 / トリヤマ補佐 官 石井愃一 / マル補佐官秘書 まいど 豊 / ミサキ ユキ 石川紗彩 / 園長  斉藤とも子 / メイツ星人 ビオ 吉田智則 / 岩佐まり / 川西美智子 / 中根大樹 / 蒲地竜也 / みわ優子 / 田中 明 / 清水未夢 / 藤田悠希 / 野副 隼 / セントラ ル子供タレント

《スーツアクター》和田三四郎 / 横尾和則

《シリーズ構成》赤星政尚 《設定考証》谷崎あきら 《脚本》朱川湊人 《監 督・特技監督》八木 毅 《監修・製作》円谷一夫 《製作統括》大岡新一 《企 画》岡崎剛之 / 江藤直行 / 中村理一郎 《プロデューサー》岩佐芳弘 / 渋谷浩 康 / 山西太平 《制作プロデューサー》小山信行 《アソシエイトプロデューサ ー》小掛慎太郎 《ラインプロデューサー》中井光夫 《音楽プロデューサー》 玉川 静 《音楽》佐橋俊彦

=本編スタッフ=

《撮影》高橋義仁 《照明》佐藤才輔 《美術》内田哲也 《録音》岩岡勝徳  《操演》上田健一 《助監督》黒木浩介 《装飾》大藤邦康 《衣装》宮崎みず ほ 《メイク》今井志保 《車両》野口茂樹 《製作主任》戸村祥章 《編集》 矢船陽介 《VFX》田代定三 《デジタルエディター》柳生俊一 《VE》佐々木彰 司 《スクリプター》森永恭子 《キャスティング》小島文夫

=特技スタッフ=

《撮影》新井 毅 《照明》高野和男 《美術》佐々木朋哉 《操演》根岸 泉  《殺陣》岡野弘之 《助監督》日暮大幹 《スクリプター》森永恭子 《スチー ル》橋本賢司 《制作主任》菊池英次 《キャラクターデザイン》丸山 浩 《キ ャラクターデザイン・イメージボード》酉澤安施 《キャラクターメンテナンス 》宮川秀男 《タイトルデザイン》佐藤さい子 《仕上げ》池田 遼 《CGIモー ションディレクター》板野一郎 / 円谷CGI-ROOM 《CGIスーパーバイザー》早川哲 司 《CGIディレクター》祖父江成則 《CGIデザイナー》上田和彦 / 小嶋律史 / 森 裕二 / 小杉淑美 / 高松玲子 《CGIマネージャー》小田達哉 《CGI協力》水 石 徹 / 三宅 仁 《エフェクトコーディネート》小野寺 浩 《エフェクトアニ メーター》増田英和 《デジタルマットアート》有働武史 《カラリスト》高田 淳 《音響効果》古谷友二 《編曲》池田地香子 《整音》松本能紀 《MD担当 》福井 顕 / 須賀久子 《催事宣伝》古池啓一 / 大野まゆみ / 菅野悦子 《製作 デスク》石渡牧子 《番組宣伝》重松和世 / 橋本栄次 / 太田小由美 / 堀川勝一 / 武藤博昭

《協力》松下電器産業 / ドゥカティジャパン / クリエイティブ・オフィス ヤッ プ / 銀座サクラヤ / プログレッシブ / キャン・インターナショナル / 日本照 明 / 東宝ビルト / 東宝コスチューム / 開米プロダクション / 亀甲船 / スワラ プロ / スリーエススタジオ / 富士通乾電池 / ヒルマモデルクラフト / ハルジ ン / グレイショコラ / 宗特機 / コダック / ムーンスター / 日本エフェクトセ ンター / IMAGICA / クレッセント / AdobeSystems / ボーンデジタル / D.A.S.T / スタジオ・バックホーン / パンチライン / RECARO / 岡村製作所 / ナナオ / レ イト商会 / K2JAPAN / 富士グローブ / KENNETH COLE / Zoff

《撮影協力》八王子市立蓮生寺公園 / さがみ湖ピクニックランド

《制作協力》電通  《製作著作》中部日本放送 /円谷プロダクション  《提供》BANDAI

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