ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス第34話「故郷のない男」マニア考察】

ウルトラマンメビウス第34話「故郷のない男」マニア考察ハードバージョン

脚本・シリーズ構成:赤星 政尚、監督:小原 直樹、特技監督:菊池 雄一、設定考証:谷崎あきら、

光波宇宙人 リフレクト星人*1 登場

メビウスマニアライター 棺桶のジョー

 いきなり、メビウス(スーツアクター:和田三四郎)とリフレクト星人のバトルである*2。それも、 メビウスのカラータイマーは赤になっている。リュウ(仁科克基)の援護を受けて、 メビウスはメビュームシュートを放つが、リフレクト星人の盾により跳ね返されてしまう。

それを避けたメビウスのバリアも通じない!「その程度ですか」とリフレクト星人(声:掛川裕彦)は、 バカていねいな口調*3で憎まれ口を叩き、 ならば、と、メビウスブレイブになり、メビウスナイトブレードを放とうとするが、 テッペイは「いけない、ミライ君」と叫び、その通り、 これも跳ね返された…リフレクト星人は、メビウスに剣を喉元に突きつけて、 「あなたなどいつでも倒せる、命は預けておきましょう」と捨て台詞を吐いて、トンズラした。 ミライ(五十嵐隼人)の悔しそうなこと!

 そんなミライを、誰かが呼んでいると言う。リュウたちは、ミライをガンフェニックスに乗せて、 その先、伊豆諸島の黒潮島に連れて行く。テッペイ(内野謙太)の話によると、ここは、怪獣頻出期に、 怪獣ブラックギラス、レッドギラスが出現して破壊され、島民はいなくなった島だと言う*4。

そこへ降り立つミライたち、と、「島民魂碑」の墓標に花を手向ける、修行僧がいた。 「俺は、地球での最初の戦いで、沈むこの島を守れなかった」それは何とおおとりゲン(真夏竜)である。 「メビウス、光の国以来だな」と言う。

しかし、構えるGUYSのメンバー、ミライはゲンに会って驚くが、ゲンは、「お前と戦うためだ」 と言い、戦えないと言うミライに、「リフレクト星人に負けて、俺にも勝てないのか」と放ち、変身した。 「ウルトラマンレオだ!」とテッペイが歓声を上げる(BGM:レオ主題歌のイントロ*5)。

しかし、レオは、メビウスに闘いを挑んだのである。その挑発ぶりに、 リュウも、ジョージ(渡辺大輔)も気に入らない。それも、光線技抜きで、ある。

ミライも変身し、ウルトラマン同士のバトルとなる*6。パンチ、格闘技を繰り出しての闘いだが、 左腕を負傷し、どう見てもメビウスの分が悪い。「本気で来なければ、死ぬことになるぞ」と放つレオ、 パンチを繰り出してメビウスを圧倒し、 レオは必殺のレオキックを放つ。右足が赤熱する*7。

それに、メビウスもキックで応戦するが、キック同士の対決は、レオの完勝であった…悔し涙を見せるミライに、 GUYSメンバーはゲンにどういうつもりだと詰め寄るが、 ゲンは「武器に頼っては、隙が出来る…最後に頼るべきは、自分自身だ*8」と言い、リュウも納得する。

ゲンは「この地球は俺にとって第2の、いや、本当の故郷だ、お前には地球を託せない」とつき放つ。 「俺たちが地球守ってきた」と言うリュウに、「リフレクト星人に負けた」と突きつけ、 「お前たちの戦いは、必ず勝たねばならない戦いなんだ」と言い切り、 「その顔は何だ、その涙は何だ、その涙で地球が救えるのか*9」と放ち、「タロウ兄さん*10は許しても、俺は許さん」、 地球をミライには任せられないと言い、そして、柔道着を手渡して去っていった。

 ミサキ・ユキ(石川紗彩)によると、ドキュメントMACの記録で、 レオは幾度も宇宙人や怪獣に負けていたと言うのだが、2度目は相手の技を上回り次は必ず勝っていたと言う*11。 幾度もの修羅場を潜り抜けてきたのである。それでも戦い抜いたのである。 故郷を破壊されている。

サコミズ隊長(田中実)は、「孤独さも力にして戦い抜いた」と言う。地球が故郷とは、そういう意味である。 光の国があるミライとは、違うのである。そういう覚悟で戦ってきたレオの試練を、リュウは理解した。

「今のお前は、いや俺たちが、レオに勝てないわけだ」と。「もう2度と負けない、 俺たちの戦いは、勝たなければならないのだ」と。さらに、テッペイは、敵を倒すすべを教えていたと言う。 リフレクト星人の体は誘導体多層膜ミラーのような構造で、 光線を吸収しない仕組みであり、これを倒すには光線技ではダメで、レオキックのような技がいると語る。

しかし、垂直で地上1000mもの威力*12を誇るレオキックと比べると、 メビウスのキックでは威力は及ばない。それを聞いて、リュウは、 レオが地球で流した汗が染み付いた柔道着を渡した意味を知る。最後に頼れるのは、自分自身だと。

「熱血バカにありそうな展開」と、マリナは呆れているが、ミライも特訓して、 キック力を鍛えるのだ!しかし、ミライは一人で鍛えるという。

 一人、山にこもり、レオの柔道着をまとって、木を蹴ってキック力を鍛えるミライ、 それを、リュウが手伝う。かなりの数の木を蹴って折り、キック力をつけるが、まだまだである。 リュウはがんばっていると言うが、ミライは足りないと思っている。 しかし、リュウは心配をかけていいということではないと諭す。

テッペイとコノミ(平田弥里)は、木がずいぶんたまった、これを使って焚き火をして、焼き芋を作ろうという。 ミライは焼き芋を食べたことがないだろうと。 が、火をつけるマッチを持っていない。と、リュウはその必要はないと、木の棒で木を回して、 摩擦熱で火を起こすのである。不思議そうに見るミライに、 リュウは、大昔の人類は、こうやって火を起こしていたと語る。 だが、この様子を見て、ミライはヒントを得るのであった*13。

 そして、リフレクト星人がまた現れた。余裕綽々である。ミライはリュウに、 今度は一人で戦わせて欲しいと言い、メビウスに変身する。リュウは絶対勝って来いと送り出す。 リフレクト星人、預けておいた命をもらいに来たと、またバカていねいな口調でバカにする。 この模様を、GUYSメンバー、そしてゲンが見守る。 が、メビウスはキックで対抗する。

メビウスのキックなど平気だとうそぶくリフレクト星人、が、メビウスはリフレクト星人の盾を、 回転キックで摩擦熱を起こし、これを撃破した! メビウスはバーニングブレイブになっていた*14。

やった!と思ったら、何と、リフレクト星人、ガンフェニックスを人質に取って、 メビウスに動かなければ命は保障すると、降伏を迫るのである。 卑怯さ、ここに極まれり!だが、そこへ駆けつけたゲン、ウルトラマンレオに変身!

リフレクト星人の剣を叩き折り、その隙にメビウスはガンフェニックスを救出した(BGM、主題歌1番)。 そして、メビウス、レオの2大ウルトラマン対リフレクト星人の対決! 二人は格闘技で徹底的に攻め立て、リフレクト星人を圧倒し、止めはレオキックと、メビウスの回転キック、 ウルトラ史上初のダブルキック*15で、回転防御するリフレクト星人を撃破した。

 勝利したメビウス=ミライは、ゲンに柔道着を返し、ゲンは「礼を言われるほどのことではない」と言うが 「僕が何をすべきか、教えてくれたのはあなたです」と。 ミライは「レオ兄さん、地球は僕がきっと」と応えると、ゲンは「俺の故郷を、お前に、いやお前たちに託せる、メビウス」 と笑っていった。

マニア的突っ込み

*1:今回のネーミングは反射=レフレックスが語源と思われます。 一昔前流行ったカメラ「一眼レフ」とは、このレフレックスの意味です。

*2:この、バトルシーンから始まるという展開は、ウルトラのテレビシリーズでは異例で、 コミックでは、例えば一峰大二版のセブン最終回がありますが、ドラマでは記憶にありません。

 メビウスでは、過去、コミックで行われた試みをいろいろ実写として作っているのがユニークです。

*3:こういうバカていねいな口調の宇宙人も、紳士的?な宇宙人ではメフィラス星人などの例がありますが、こうして相手をバカにする語り口は、ウルトラでは珍しいです。どちらかというと東映ヒーローに多いもので、東映の要素もメビウスではよく見かけます。

*4:この黒潮島は、レオ第1話の舞台で、レオの故郷、L77星を破壊したマグマ星人、ブラックギラス、レッドギラスの3匹で東京攻撃の一歩として上陸、それを阻止せんと、地球にいたウルトラセブンが挑むものの、ギラススピン(ブラック、レッドの2大ギラスが合体して回転し、竜巻を起こす)にアイスラッガーを跳ね返され、さらに足を折られ、セブン絶体絶命の時にレオが現れるのが展開でした。この時の特撮は高野宏一監督のもので、大津波を佐川和夫監督とは異なる演出で見せています。

*5:レオの主題歌イントロは、今回レオの登場場面に2度流れたものの、オリジナルの主題歌とは異なるもので、多分新録音でしょう。

 ちなみに、レオの主題歌のインストゥルメンタル(カラオケにオーケストラでメロディを入れたもの)は、ウルトラのアクションBGMでも屈指の人気曲でした。

*6:ウルトラマン同士のバトルは、平成ではガイアとアグルの対決が何度もありましたが、それ以外にはあまりなく、レオ37話で、ババルウ星人の陰謀によりレオ兄弟とウルトラ兄弟が争うことになったのが有名なものの、このようなバトルは前例がありません。平成のライダーでは、ライダー同士のバトルが日常茶飯でありますが、今回のバトルは、ライダーとも全く異なるものです。

*7:レオキックは、右足が赤熱するのが特徴で、ガチャポンHG47で、これは再現されています。

 これは、格闘技でも、光線技的な要素を持たせるものであり、そのルーツはミラーマンの後半に出てきたキック技、 ミラースピン(書籍でミラーキックとなっているのは間違い)、 ミラクルキックは、いずれも敵怪獣を切断する、光線技的な格闘技なのです。

レオでも、キックでの切断例はないと記憶しますが、チョップの時も手が赤熱し、 それで敵を切断するスライスハンドという技があります。

また、ウルトラマン80には、400紋キックという技があり、決まると光線が炸裂します。 このように、円谷ヒーローの格闘技は、ライダーなどと異なり、光線技的な要素を多分に持っていたのです。 平成では、格闘技の展開が少ないので、 今回のキック、昭和ウルトラをあまりご存じないファンには新鮮ではなかったですか? (ゼアス2作目でかかと落としが使われていますが)

 ちなみに、ウルトラで最初にキックが使われたのは、帰マン11話で、モグネズンを2段スピンキックで倒している件であり、ただしこの時はカメラを回転させて、スピン(回転)キックを表現しています。ライダーキックとは違う演出です。

*8:「武器に頼っては、隙が出来る」と聞いて、戸惑った方もおられるでしょうが、日本のヒーローは、基本的に、飛び道具は最後に使うもの、基本は肉体が武器、が鉄則でした。その象徴が忍者部隊月光(1963年)の、あまりに有名なセリフ、「拳銃は最後の武器だ、我々は忍者部隊だ」というものです。  考えたら、初代マンでも、スペシウム光線は最後の最後に毎回使っています。  これは、日本のヒーローの哲学を、久々に思い出させてくれました。

*9:これはゲンが、ダン隊長から放たれたセリフです。男のダンディズムです。

*10:レオが「タロウ兄さん」と言っていますが、タロウとレオが共演した場面は、 過去のテレビシリーズではありません。 コミックでは、内山まもる版レオで、ウルトラキラー・ゴルゴの話に、タロウがレオの助太刀をするのですが、 テレビシリーズだと、意外な取り合わせがないのです。

 もっとも、真夏竜さんは、タロウ役の篠田三郎さんと、刑事もの「二人の事件簿」 (75年、大映テレビ、ABC)で共演しています。これの脚本を書いているのが佐々木守さん! 今から考えたら、佐々木さん、狙っていたみたいですね。佐々木さんも今年、鬼籍に入られましたが、ひょっとして、今回の放映を佐々木さんも天国で見て、円谷英二、一さん、金城さんに「タロウとレオの共演は僕が最初にやっていたよ」とか言っているかも知れませんね。

*11:レオは、前半は光線技を持たず、1度目は負けて、その後特訓して勝利するパターンが多かったです。ただし、後半、ウルトラマンキング登場以降は、光線技を多用するようになります。あるウルトラマニアは、レオの強さは、第1話と最終回では桁違いであると考察していますが、確かに、後半のレオは強いです。最終回では、最強の円盤生物、ブラックエンドを圧倒し、ブラックスターを撃破しています。

*12:これは、格闘技の威力の表現としては面白いものでした。ライダーでは、キックの強さを何トンと表しています (現在のカブトでも、テレビ朝日HPに公式データあり)が、 ウルトラの格闘技を、何メートルからの落下と表現するのは面白いです。光線技の威力を、何万度と表して来たわけですが、今後、ウルトラの格闘技の威力表現方法として定着するかも知れません。

 ただ、レオの放映時、キックの威力を表すのに、このような表現はなかったと記憶します(チョップで高層ビルを叩き斬るという表現がありましたが)。

*13:特訓の場合は、突破口を何らかのきっかけで見つける場合も多く(レオ第4話では、水を斬るのに、花びらを目標として成功しています)、今回は上手い伏線です。

*14:回転キックは、帰マンのスピンキックが有名ですが、これは自身が縦に一回転して蹴るもので、 今回のようにドリルのようなキックはウルトラでは初めてです。

 ドリルのような必殺技では、ダイナが「平和の星」で、メノーファを倒すのに、ストロングタイプになって、 自身がドリルのように回転して敵に穴を開ける技を使っています。 これのルーツは、超電磁ロボ・コンバトラーV(76年、サンライズ&東映)の超電磁スピンと思われます。

*15:平成になり、二人のウルトラマンが同時に光線を放つダブル光線は多々あったものの、 二人のウルトラマンが同時にキックを放つのは前代未聞です。

 仮面ライダーでは、1号2号の時から、二人で放つライダーダブルキック( 文献にはダブルライダーキックともありますが、この名称はTHE FIRSTで初めて使われたもので、 昭和の1号2号での名称はライダーダブルキックです)が頻繁に使われていましたが、このダブルキックは、 ひょっとしたらライダー以外では初めてかも知れません。

総括的な考察

(1) 特訓に付いて

 ウルトラシリーズでは、特訓は概ね不評でした。最初の特訓は、帰マン第4話「必殺!流星キック」で、 キングザウルス3世に破れ、そのバリアを破るために郷が特訓するものの、ウルトラマンは飛べるのだから、 こんな特訓しないでも、空から攻撃したらいい、とファンには散々でした。 が、この時生み出された流星キックが、メビウスに伝わるとは、ビックリでした。

 レオでの特訓は、60〜70年代のスポ根ものの流れをモロに汲んでおり、 今のスポーツ理論から見たら全くナンセンスなもので、単に、ダン隊長がゲンをいじめているだけ、と酷評されていました。

実際、レオでの特訓は、今の時代に再現することは科学的にも、倫理的にも不可能です。それを、 極めて科学的な観点から今回は見直して、21世紀の特訓を見せてくれました。

 ちなみに、巨人の星的な特訓のナンセンスさは、スポーツライターの玉木正之さんが10数年前にテレビ で指摘していますが、反面玉木さんは、根性のないものは勝てないと、 当時、神戸製鋼のラガーであった平尾誠二選手の例から説いています。 特訓も、根性も、科学的な裏づけを要する時代なのです。

(2) ウルトラマンレオの単独登場

 意外にも、レオが後のシリーズに出るのは初めてです。これはタロウもそうで、この理由は、 以後に出るべき作品がなかったことによりますが、29,30話のタロウといい、上手く出しています。

 昭和では、弟のピンチに、兄が安易に駆けつける例がたくさん出て、飽きられた前例があるため、 メビウスでは兄貴分の助太刀は、かなり理由を論理付けてやっているのは、理想的なウルトラ兄弟の出し方です。

 なお、レオが格闘技を使うのは、制作費の問題もあるものの、当時、ブルース・リーの 「燃えよドラゴン」シリーズがブームで、その影響が大きいです。ケットル星人との対決には、 ヌンチャクを使っており、この姿がウルトラ・アルティメットソリッドで再現されています。 しかし、格闘技が画一的になったのか、後半は光線技を留めに使うようになりました。
 …というところで、今回はこれくらいで

管理人レポートページ(1) ⇔マニアレポートページ(2)

メビウスベルトTOP▲