ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第35話「群青の光と影」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第35話「群青の光と影」ハードバージョン

監督・特技監督:村石 宏實、脚本:小林雄次

メビウスマニアライター T2-0

静寂を破り夜の街に降り立った者、それは青いウルトラマンだった! 高らかな笑い声を響かせ、街を破壊するツルギ!!その姿に、出動したGUYSも困惑を隠せない。しかし、 ミライ(五十嵐隼士)はメンバーに言った。「あれが本物のツルギのはずがない!」と。

リュウ(仁科克基)の提案を受け、ツルギと話し合うべくメビウスに変身するミライ。 「お前は何者だ!?」メビウスはツルギに問いかける。しかしツルギは、メビウスに一撃を加え、 飛び去ってしまうのだった。

ツルギの行方は知れなかった。そしてフェニックスネストのディレクションルームでは、 ミライがヒカリを弁護していた。 「ツルギが、いや、ヒカリが人間を裏切るはずがない」と。 ミライは、今回の一件をヒカリを陥れようとする何者かの仕業だと考えていたのだ。 「僕らウルトラマンの信頼を失わせようとする何者かの悪意を感じるんです」、ミライはそう言った。

世間では、ツルギを侵略者とする認識が強まりつつあった。隊員食堂のテーブルで、 ミライは深刻な表情を浮かべていた。 その手には、街を蹂躙したツルギの蛮行を報じる新聞があった。 気に病まないようにとミライに助言するジョージ(渡辺大輔)とマリナ(斉川あい)。 しかし、リュウは言った。「無理もないのかもな」と。

ヒカリはツルギだった頃、周囲の犠牲を省みない戦いを行っていた。 その時の恐怖が人々に残っているのではないかと言うのだ。その言葉に驚くコノミ(平田弥里)。 そしてテッペイ(内野謙太)は、地球に青いウルトラマンが訪れたことは初めてであることから、 市民の間ではヒカリがウルトラマンであること自体が認知されていないのではないかと推測していた。

そんなある夜、ウルトラマンヒカリが地上に降り立った。等身大のヒカリは、 駐車場でババルウ星人と対峙する。「地球での貴様の信頼は失われた。 もはやこの星に貴様の居場所はない!」、ヒカリをあざ笑い、ババルウ星人はツルギに変身した!

ババルウ星人の化けたツルギ、そしてウルトラマンヒカリは巨大化し、 戦闘を開始した!ヒカリに光線を浴びせ、その場を立ち去るババルウ星人。 そして、残された青いウルトラマン、ヒカリの姿に人々は恐怖した。 そしてヒカリは、自分を恐れる人々の言葉に愕然とするのだった。

セリザワ(石川真)の姿になったヒカリは、フェニックスネストを訪れていた。 そんなセリザワを、GUYSのメンバーは仲間として迎え入れる。 サコミズ隊長(田中実)に敵の正体を尋ねられ、セリザワはその正体・ババルウ星人について語った。

ドキュメントMACに残る記録によれば、ババルウ星人は以前にもウルトラマンに化けたことがあった。 そして今回、地球に向かう途中でヒカリと戦い深手を負ったババルウ星人は、 その恨みから彼の信頼を失墜させる作戦に出たのだ。

セリザワは、トリヤマ補佐官(石井愃一)とマル補佐官秘書(まいど豊)に、 自分がウルトラマンヒカリであることを明かす。 その言葉に、セリザワを拘束することを命じるトリヤマ。 彼も青いウルトラマンを危険な存在と考えていたのだ。

そしてミサキ(石川紗彩)から、GUYS総本部の要請が伝えられた。総本部は、 セリザワを監視下に置くことを決定したというのだ。 セリザワは独房に監禁されることとなった。このセリザワの扱いに憤慨するミライ。

しかし、そんなミライをなだめたのはリュウであった。 「俺だって悔しい。けど、セリザワ隊長にも何か考えがあるはずだ」 「総本部の連中がどう思おうと気にすることはない。この俺が誰よりもセリザワ隊長を信じてる」と。

ミライは監禁中のセリザワに、テレパシーで話しかけた。「また一緒に戦いましょう」。 そう呼びかけ、ナイトブレスをセリザワに返すミライに、セリザワは答えた。 「今逃げ出せば、よけい信頼を失うだけだ」。

セリザワは、これから地球を訪れるかもしれない青い身体の同胞のためにも、 人々の信頼を勝ち取ることが必要だと考えていたのだ。「君に出来たことが俺に出来ないはずはない。 俺も君と同じウルトラマンなのだから」。そうセリザワは語るのだった。

再びツルギが出現。街を破壊しはじめた!セリザワを開放するよう立哨に求めるリュウ。 その時ミサキが現れ、セリザワの拘束を解いた。 総本部の思惑どおり偽のツルギが出現したことで、セリザワの潔白が証明されたのだ!

リュウと共に出動したセリザワはヒカリに変身!二体の青いウルトラマンの戦いが開始された!!その様子に驚き、 戦いを見守る人々。偽のツルギは人々に向けて光線を放った!身を盾にしてその光線を受け、人々を守るヒカリ!

ダメージを受けたヒカリのカラータイマーは点滅を始めていた。うずくまるヒカリにリュウが叫ぶ。 「立ってくれ、セリザワ隊長!あんたはウルトラマンなんだ!!」 その声を耳にし、ヒカリはブレードショットを偽のツルギに放った。 直撃を受けたツルギは、遂にその正体、ババルウ星人の姿を現した。

メビウスに変身すべくメビウスブレスをかざすミライ。しかしヒカリは支援を拒んだ。「この戦いは、俺が決着をつける!」「俺はもう一人ではない!」きっぱりとそう言い放ったヒカリをまばゆい光が包む!そして、鎧をまとったウルトラマンヒカリの姿が現れた!!「この星では、貴様の好きにはさせない!」、ウルトラマンヒカリは、ババルウ星人を圧倒していく。そしてヒカリは、ナイトシュートでババルウ星人を粉砕するのだった。

戦いを終え、GUYSのメンバーに別れを告げるセリザワ。地球には危機が迫っていた。 ババルウ星人をその尖兵と見たヒカリは、その調査に向かうつもりなのだ。 GUYSのメンバーと、リュウに礼を述べるセリザワ。

「ありがとう、リュウ。君のおかげで俺はウルトラマンになれた」 一筋の光となり、空に飛び去るウルトラマンヒカリ。GUYSのメンバーは笑顔で彼を見送るのだった。

ウルトラマニア考察

今回のエピソード「群青の光と影」は、ヒカリがウルトラマンとしての信頼を得る過程を描いた、 見ごたえある一本となりました。

今回のドラマで驚かされたのは、ヒカリが自分の過ちについてかなり自覚的であったことです。 「俺の過去に犯した罪はたやすく清算できるものではない」と語るヒカリ。復讐心に囚われ、 犠牲を省みない戦いを続けてきた過去のヒカリは、 市民にとってはババルウ星人の化けた偽ツルギに近い存在であったとすら言えるのかもしれません。

そのようなヒカリがGUYSメンバーの信頼に感謝し、市民の信頼を得るために戦う様は、 メビウスの戦いに対比させたもののように思えました。 思えば、メビウス自身もウルトラマンになるために努力し続けてきました。

第1話で、大きな被害を出した戦いぶりをリュウに非難されたメビウスは、ここまで強くなり、 そしてタロウやレオに認められるほどに成長しています。 これまでの戦いを通じ、GUYSの隊員として仲間の信頼を得、 ウルトラマンとして市民の信頼を得たミライ。

その後にミライは、ウルトラマンとしての正体を隊員たちに明かしました。 一方、既にGUYSの隊員たちに正体が知れており、今回の事件でもその信頼が揺らぐことのなかったセリザワは、 今回の戦いで市民からの信頼を得るための戦いに挑むこととなりました。

「GUYSの仲間からの信頼(人間としての信頼)」「市民からの信頼(ウルトラマンとしての信頼)」 「ウルトラマンという正体を明かした上での信頼(人間であり、ウルトラマンであるものとしての信頼)」 という3つの信頼が、異なる順序で得られていく対比は興味深いものでした。

さて、今回の印象的な描写は、いつも穏やかなミライが激しい怒りを見せるあたりでしょう。 ババルウの行為は、ヒカリの想いを踏みにじるものであると同時に、 ミライの積み重ねてきた努力をも無に帰する恐れのあるものでした。 映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」で、メビウスはザラブ星人に対して激しい怒りを見せます。 今回、ミライの心には、この時ザラブ星人にぶつけた怒りと同質のものが湧き上がっていたのではないでしょうか。

そんなミライと対比するかのように、今回のリュウは成長ぶりを感じさせる描写が光っていました。 セリザワの開放を求め、ババルウ星人への憎しみを語るミライをなだめるといった描写は、 かつてのリュウからは考えられない役どころです。

隊員食堂で、市民がツルギに対して抱いているであろう感情を冷静に分析する場面もなかなかです。 その一方で、ちゃんと熱いハートを持っている男として描かれており、かなりおいしいキャラになってますよね。 そして、ミライを思いやり、 セリザワを暖かく迎え入れるGUYSメンバーの描写もグッドです。

これらの描写がしっかりなされていることが、クライマックスの説得力に繋がっています。 「俺はもう一人ではない!」とのヒカリのセリフには泣かされました。メビウスとヒカリの共闘ではなく、 新しいツルギ単独の戦いで締める変化球ぶりもグッドです。

その他のヒカリの描写としては…。 メビウスとの会話でヒカリが語る「後に続くかもしれない青き身体の同胞のためにも、 信頼を勝ち取ってみせる」との言葉は、結構重いものがあります。このテーマは、 近年ではウルトラマンマックス第25話「遥かなる友人」でも見られるものです。 理想としてしばしば語られる「他者との共存」ですが、それを実現する難しさを我々は知っています。

ウルトラシリーズは、そのような理想を実現することの困難さをしばしば描いてきました。 今回のエピソードには、このような重いテーマもさりげなく含せてられており、感心させられました。

その他の気になるポイントとしては、セリザワを拘束することを主張するトリヤマの発言のあとの展開でしようか。 視線を交わすサコミズとミサキ、そしてミサキから伝達される「総本部からの要請」。これまでのエピソードにも見られた 「総本部」や「総監」の意思の描写にも連動した、意味深な描写でした。

過去作品とのリンクポイント

@今回の監督は、平成ウルトラで幾多の傑作を手がけた名手・村石監督です。 手堅い演出で見せてくれる村石監督は、今回「等身大のウルトラマン」を登場させてくれました。 等身大のウルトラマンの登場は、ウルトラマンティガ第13話「人間採集」、 ガイア第18話「アグル対ガイア」でも見ることができます。 この等身大のウルトラマンというシチュエーションは、村石監督自身もお気に入りだそうですよ。

A記者会見でのトリヤマのセリフ、「たとえ何者であろうとも、市民の平和を脅かす者に対しては断固たる 態度で臨みます」。 これは、ウルトラマン第18話「遊星から来た兄弟」で、街を蹂躙するウルトラマンに対するムラマツキャップの言葉 「たとえウルトラマンであっても、地球の平和を乱すものとは戦わねばならない!」を思い出させてくれました。

ザラブ星人が変身した「にせウルトラマン」は、 その後もしばしば登場するウルトラマンの偽者の初登場となります。 この「にせウルトラマン」は、本物と異なる外見的特徴(釣り上がった目ほか)を持っており、このような 「ちょっと違う」あたりは後の偽者の定番ポイントとなりました。

Bしかし、ウルトラマンレオ第38・39話でババルウ星人が化けたアストラは、 外見的な差異が全く見られないものでした。ウルトラ兄弟どころか、実の兄レオまでも欺く完璧な変身と、 その作戦は、地球とウルトラの星を壊滅寸前にまで追い込みました。

C「これまでたくさんのウルトラマンが地球に訪れましたが、青いウルトラマンは初めてなんです」 とのテッペイのセリフは聞き逃せません。 ウルトラシリーズには、これまで「アグル」「コスモス・ルナモード」「ネクサス・ジュネッスブルー」 等の青いウルトラマンが登場しています。 しかし「ウルトラマンメビウス」の世界観は、 ウルトラQ〜ウルトラマン80の作品世界から連なる世界として設定されています。 このテッペイのセリフは、これらの「青いウルトラマン」が登場した世界と 「メビウス」は異なる作品世界であることを、さりげなく示唆したものといえるでしょう。

ウルトラマンであるかどうかを決めるのは、外見ではなく、その魂である…。 このようなテーマを持つエピソードが、レオの登場する回の次に配されたことは興味深いです。 レオも、自らの努力により「ウルトラマンになった」わけですからね。

「メビウス」というシリーズは、ウルトラマンであることの意味や、人間とウルトラマンとの関わりを様々 な角度から描く試みを続けています。 正体を明かしてなお、人間と共に戦うウルトラマンを描き、 過去のシリーズが踏み入ることのなかった領域に挑みつつある「ウルトラマンメビウス」! 今後の展開にも期待大です!

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