ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第36話「ミライの妹」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第36話「ミライの妹」 ハードバージョン

【メビウスライター 帰りマン&ティガ命】

シリーズ構成・脚本:赤星政尚、設定考証:谷崎あきら、監督・特技監督:村石宏實

GUYSはアングロスという怪獣と戦っていた。ミライ(五十嵐隼士)、ジョージ(渡辺大輔) とマリナ(斉川あい)、リュウ(仁科克基)が乗っている3機の戦闘機は一斉攻撃をかけるが、 アングロスは地中に潜って逃げてしまう。

GUYSの4人は帰還しようとするが、その時ミライは地上に倒れている少女を発見した。 ミライがその少女(高宗歩未)のところへ行くと、その少女は少し怖がる素振りを見せた。 ミライは、その少女を見て、その正体に気づいた。

基地に戻ったリュウ、ジョージ、マリナはテッペイ(内野謙太)、コノミ(平田弥里) と共に食堂で食事をしていた。そこへ少女を連れたミライが現われた。 驚く5人・・ジョージは手品のようにバラの花一輪を取り出し、少女に渡す。 ミライと少女の関係を尋ねる5人に、少女は「妹です」と答える。 その答に、ミライも含めて6人が一斉に驚き、固まる。

ミライから5人への説明:自分には妹はなく、その少女はサイコキノ星人である。 サイコキノ星人はいたずら好きで、超能力を使う。

超能力という言葉を聞いたテッペイは、アングロスに生体反応がなく、誰かに操作されていた可能性を示唆する。 その少女が犯人である可能性がある中で、ミライはもしそうだとしても、絶対に止めさせると言う。

そこへトリヤマ補佐官(石井愃一)とマル補佐官秘書(まいど豊)の二人がやってきた。 少女のことを尋ねる二人に、リュウは少女の名はカコだとその場しのぎで名付ける。

トリヤマは自分のインタビュー記事が乗った雑誌(表紙はヒッポリト星人)を得意気に見せ、 「宇宙人などいなくなってしまえばいい」と言う。次の瞬間、トリヤマのズボンが落ち、 さらにトリヤマは空中に持ち上げられる。ミライは少女(以下カコ)の手を引き、外に出る。 ミライはカコに「この星にはこの星のルールがある」と諭す。

指令室では、テッペイがリュウ、ジョージ、マリナ、コノミにアングロスの出現時に検出された波長と、 カコがトリヤマを持ち上げた波長が同じであることを伝えた。一同はカコがアングロスを操っていたことを確信する。

外で考え込むミライ・・そこへ来たサコミズ隊長(田中実)にミライは、 過去に地球を訪れた大先輩が地球の少年と兄弟になる約束をしたことを伝えた。 それ以来、兄弟という言葉が光の国では特別な意味を持つようになったのだ。

カコは二人の会話を立ち聞きし、ニヤリと笑い、立ち去ろうとする。 さらにミライは、サイコキノ星人は発達した超能力のせいで故郷の星を失くした種族であり、 いたずらするのも自分たちの星を持たない寂しさをまぎらわすためかもしれない、と言う。

友好目的ではないと感じつつも自分の妹と名乗ったカコを信じたい、 と思っているミライの気持ちと優しさを感じたサコミズは、しばらくカコが泊まれるように手配すると告げ、 さらに兄として妹の面倒を見るようにと言い、その場を離れる。 話を聞いていたリュウ、ジョージ、マリナ、テッペイ、コノミの5人はミライに協力し、カコの歓迎会を開くと申し出る。

カコはミライら6人と楽しい時を過ごす。ミライはカコに「ありがとう」という言葉の意味を教える。 バラの花を胸のポケットに挿していたことに気づいたジョージは、今度は花束をプレゼントするとカコに言い、 マリナに文句を言われる。そのやりとりを聞くカコはおかしそうな表情をする。 マルと共にそんなカコを遠くで見ていたトリヤマは、カコが宇宙人だと疑っていた。

夜、ミライの部屋で共に寝ていたカコは、ミライに近づこうとするが、ミライに気づかれてベッドに戻る。 翌朝、ミライの部屋を出て外にいたカコにトリヤマとマルが近づき、 正体を暴こうとしてカコをテープで縛ってしまう。カコは超能力でテープを切る。 そこへミライが駆けつけるが、カコはトリヤマをテレポーテーションで遠くへ飛ばしてしまう。 ミライに言われてトリヤマを戻したが、トリヤマは氷づけとなり、ペンギンとアザラシが見えたと震えながら言う。

カコを責めるミライに、カコは「私にこの力を使わせるように仕向けたのは、 その人間じゃないか。どうせ私たちはどこへ言っても厄介者扱いしかされないんだ。」と言い、走り去る。

カコは、5人の仲間がいるところへ行った。仲間たちはカコに、何ぐずぐずやってんだ、 ウルトラマンになる前なら簡単に倒せると言い出したのはあんたなんだからね、 宇宙警備隊員が兄弟という言葉を使うと無条件に心を開くという噂は本当だったんだね、などと話す。

そこへやってきたミライは、すごく嬉しかったのに・・と悔しがる。 ミライを倒そうと近づく仲間の5人に、カコは自分が倒す約束だ、と制する。5人は姿を消す。 カコはアングロスを出現させる。戦う理由を感じないミライだったが、街の人々を守るためにメビウスに変身する。

メビウスはカコの超能力で金縛りに合う。そして土に埋められて頭しか出なくなる。 コノミはミクラスを出現させ、ミクラスはアングラスと戦う。 メビウスはカコに、どうしてこの力をもっと違う目的のために使わないんだ、 そうすれば君たちは絶対に今とは違う生き方ができる、 GUYSのみんなと一緒に過ごした時間は楽しかったはずだ、(カコの回想シーン)君たちの力を正しく使えば、 いろんな星の人たちときっと仲良くできる、とテレパシーを送る。

カコは背を向けて走り去る。金縛りが解けたメビウスは脱出し、 メビュームシュートを放つ。アングロスは爆発。カコを探すメビウスに、カコは、 この星から時空波が出ていて、それに呼ばれて円盤生物や宇宙人たちがメビウスをやっつけに来ているとテレパシーで教える。

指令室に戻ったミライに、サコミズ隊長は「優しさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、 互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする、その気持ちを失わないでくれ。 たとえその気持ちが何百回裏切られようと。」とドキュメントTACに残されたあるウルトラマンの言葉を伝える。

ミライの思いはカコに通じたと言うサコミズ隊長・・その場を離れたリュウ、ジョージ、マリナ、 テッペイ、コノミの5人は、ミライにあんな思いをさせないために、必ず時空波をつきとめると誓う。

カコは仲間5人と共に歩いていた。次はミステラー星とアテリア星の戦争をもっと悪化させようか、 それともバルダック星でまた雪崩を起こそうか、と話す仲間たちに、バラの花を手に取ったカコは 「ねえ、私たちの力、もっと違うことに使えるんじゃないかなあ。」 と言い、さらにバラの花を見ながら「ありがとう・・か」とつぶやく。 カコら6人は元のサイコキノ星人の姿になり、空中で待つ宇宙船からの光に吸い込まれていった。

過去のウルトラ作品とのリンクポイント

1.ウルトラマンと少年のエピソード
ミライが語ったウルトラマンと地球の少年の兄弟関係・・2つのエピソードをあげてみます。

(1)郷秀樹と次郎少年(帰りマン)
郷秀樹(帰りマン)は、ナックル星人に兄と姉(郷の恋人だった坂田アキ)を殺されて、 孤独の身となった次郎少年の兄になろうとし、次郎に「お兄ちゃん」と呼ぶように言います。しかしながら、 41話でバルタン星人を見たという次郎少年を郷は信じなかったために、 次郎少年はバルタン星人がいることを確かめようとしてビルの工事現場に潜入し、捕えられてしまいます。

最後、帰りマンは勝利し、次郎少年たちも救出されるのですが、 郷は次郎少年を信じようとしなかった自分を反省し、兄としてではなく、一番仲の良い友達になろうとします。 ラストで二人は互いを「先輩」「後輩」と呼び合います。

(2)北斗星司とダン少年(エース)
エース29話で、梅津ダンという少年は、自分だけウルトラの星が見えるということで、 友達と喧嘩になります。このダン少年は幼い時に母親を亡くし、 さらに父親を超獣ギタギタンガに殺されて姉の香代子と二人暮らしをしていました。

そのギタギタンガとの戦いにおいて、ダン少年は地底人に追いかけられて、崖からすべり落ちてしまいます。 エースはギタギタンガや地底人と戦い、ダン少年から地底人の弱点を聞いていたおかげで勝利を収めるのですが、 ダン少年も負けるもんか、という必死の気持ちで崖を登り切ります。 困難を克服したダン少年はウルトラ6番目の弟として認められ、以後北斗との交流が続きます。 (43話を最後に姿が見えなくなるのは残念なのですが・・)

※その他にも白鳥健一少年は、東光太郎(タロウ)を、梅田トオル少年もオオトリゲン(レオ) をそれぞれ兄のように慕います。

2.「兄さん」という言葉(ウルトラ兄弟同士の関係)
ミライは劇場版も含めて、先輩のウルトラ兄弟たちを「兄さん」とよく呼びます。 レオもメビウス34話でタロウのことを「タロウ兄さん」と呼びました。実際には設定上、 ウルトラ兄弟たちの間には血のつながりはあまりなく、 セブンとタロウが従兄弟同士(タロウはウルトラの父・母の実の子)、 レオとアストラが実の兄弟というだけです。

この「兄さん」という呼び名ですが、レオ34話で郷がダンを「兄さん」と呼んでいたし、 タロウでもウルトラ兄弟登場時には「兄さん」と呼んでいました。 当時は個人的には違和感があったのですが、どうやらウルトラ警備隊員の間では、親しい先輩のことを 「兄さん」と呼ぶ風習があるようです。 今回、ミライがカコから「兄さん」と呼ばれて嬉しかったのも、こうした感覚からなのでしょう。

3.ヒッポリト星人
トリヤマ補佐官が持っていた雑誌の表紙には、何とヒッポリト星人の写真が・・ ヒッポリト星人はエース26・27話に登場し、 ウルトラ5兄弟をタール漬けにして固めてしまったとんでもない宇宙人です。

このため27話ではウルトラの父が救援に駆けつけるのですが、 メビウス次回作のウルトラの父登場に向けてのさりげない演出でしょう。

4.ミステラー星とアテリア星の戦争
最後のシーンでサイコキノ星人が語った、 ミステラー星とアテリア星の戦争ですが、その一方のミステラー星人が帰りマン49話で登場し、 当時でも既に30年と長期化していた戦争のため、 帰りマンとMATを捕えて自分たちの戦力にしようとしました。 結果は見事に失敗するのですが、あの戦争が今でも続いていたとは・・本当に驚きです。

5.バルダック星の雪崩
同じくサイコキノ星人が語った、バルダック星も帰りマン39話で登場します。 240年周期で地球に接近するバルダック星の星人たちは、地球を侵略しようとしますが、 帰りマンにより撃退されます。

バルダック星は絶対零度(−273度)の冷たい星で、バルダック星人の武器も冷凍ガスです。 実は、この話でバルダック星自体が帰りマンにより破壊されるのですが、 今回サイコキノ星人が話していたバルダック星は、残党たちが別の星に移り住んだということなのでしょうか。

6.エースが残した言葉
24話レポでも紹介させていただきましたが、エース最終話でヤプールの残党がサイモン星人に化け、 超獣を操ります。ヤプールはテレパシーで北斗に語りかけ、北斗はサイモン星人の姿のヤプールを射殺しますが、 ヤプールを撃った北斗の言葉を子供たちは信じませんでした。

その理由を説明するために、子供たちに自分がエースであることを明かし、地球を去ることになります。 その時残した言葉が、「優しさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、互いに助け合い、 どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。 それが私の最後の願いだ。」です。今回、 最後の方でサコミズ隊長がその言葉をほとんどそのまま紹介しましたが、やはり重いものがあります。

ウルトラマンマニア考察

1.サイコキノ星人の行動・価値観について
今回のサイコキノ星人の行動についてですが、目的意識に非常に乏しく、 その価値観は信じられないものがありました。メビウスを倒すというのも、 時空波の影響もあるのかもしれませんが、侵略とかの明確な目的があるのでもなく、 まるでゲームを楽しんでいるかのようです。

ミステラー星とアテリア星の戦争をもっと悪化させようか、とか、バルダック星でまた雪崩を起こそうか、 といった発言には全くモラルを感じることができず、恐ろしくなるものがあります。 このような全く理解の範囲を超えている価値観を持っている者たちが相手である時に、 実際にはどう対処すべきなのか、考えさせられるものがあります。

2.ミライの心
ミライはサイコキノ星人であるキノが友好目的ではないことを感じつつも、 それを信じようとします。しかもミライはサイコキノ星人たちが多くの星でトラブルを起こしていることも知っています。 サイコキノ星人たちは、宇宙警備隊員たちが「兄弟」という言葉に弱いということを知っていて、 カコ自身もそれを利用してミライに近づくのですが、純粋でだまされやすいミライの欠点をついた形となりました。

しかしながら、ミライの方もだまされることを最初から覚悟しつつ、信じようとしたように思えます。 「たとえだまされても信じたい・・」実際は相当危険ではあるのですが、ミライらしいと言えます。

今回の話を観て思い出したのは、マックス7話「星の破壊者」です。ミズキは、 実は侵略者であった異星人のケサムを信じようとします。 この時のミズキの行動も安全保障という点においては、非常に危険だったのですが、 「信じたい」というミズキの心も、踏みにじりたくないと思わせるものがありました。

3.カコの心
一方、ミライから信じてもらい、優しくしてもらったカコの方はどうだったのでしょうか。 「ありがとう・・か」とつぶやきながら花を見つめるカコには、明らかに変化が見られました。 もしかしたら、サイコキノ星人たちは愛情という感情が種族全体として未発達なのかもしれませんが、 カコは明らかに感情面で大きな進化を遂げました。その意味では、ミライの信じる心が通じ、 ミライ自身も報われたと言えるかもしれません。

しかしながら、周囲の友人たちを見る限り、愛情の感情が発達してしまった分、カコはこれから周囲の仲間との関係で、 大きな苦労を背負うことになるのかもしれません。いつかまた再登場して、 より成長した姿を見せて安心させて欲しい、と思いました。

4.トリヤマ補佐官の言動について
まるで「宇宙人を見ると敵と思え」とでも言わんばかりの発言がありましたが、 侵略宇宙人も多い中で、理解できる部分もある反面、実際にはメビウスの中でも 7話のファントン星人のように友好的な宇宙人も登場します。

今回は、十分な証拠もないままにカコをテープでいきなり縛ったりするのは、やはりやり過ぎと言えるでしょう。 トリヤマ補佐官の言動は、宇宙人アレルギーが強いという感覚を象徴的に見せたかったのでしょうが・・。

5.信じることの大切さと難しさ
今回の話は非常に難しい内容でした。特に今回は、サイコキノ星人たちが普通ではなかっただけに、 信じることの難しさを突きつけられたような話になり、信じることの大切さと難しさの両方が出た回となりました。

ハリウッド映画のET・・ガメラ最新作など未知のものを信じて守ろうとした子供たちの心を美しいと思う反面、 初代マンのザラブ星人やゴジラ映画のX星人のように、友好を装って近づく侵略宇宙人を見ると「だまされるな」 と思う自分もいます。

信じるべきかどうか、というのはどうも結果論優先になりがちで、実は判断すること自体が相当難しいのかもしれません。 やはり、本当の信頼とは少しずつでも時間をかけて、じっくりと積み重ねていくべきものなのだと思います。

6.エースの言葉が持つ重み
こうした中で、サコミズ隊長が言ったエースが残した言葉は、ものすごい重みがあります。 「優しさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、互いに助け合い、 どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえその気持ちが何百回裏切られようと。 それが私の最後の願いだ。」というエースの言葉ですが、 やはり、人間関係においては互いに裏切らないような関係を築くことが、まずは大切だと思います。

そして優しさ・・人類が持っているこの心の中の宝物は決して失くしてはならないものです。 このエースが残した言葉・・そして、この言葉が持つ意味・・未来に受け継いでいければ、と思います。

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