ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第40話「ひとりの楽園」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第40話「ひとりの楽園」 考察ハードバージョン

メビウス第40話「ひとりの楽園」*1 赤星政尚(シリーズ構成)、谷崎あきら(設定考証) 脚本/朱川湊人、監督・特技監督/小中和哉 宇宙植物怪獣 ソリチュラ 登場

メビウスマニアライター 棺桶のジョー

宇宙から、隕石が飛んできた。そこから、白い触手が伸びていく…不気味な模様であり、 それが、地球の植物と触れて、白から緑へと変色していく、 そして、白い不気味な花がどんどん開く…宇宙の、植物怪獣ソリチュラ (スーツアクター・末永博志)の誕生である!*2花びらが落ちて、白いコートになり、そして・・・

 ある夜、ケッタイなコートに身を包んだ男が歩いていた。 すれ違った女性が、気がかりになり、声をかけるといない…と思ったら後ろにいて、 顔を見たら「花」!*3こいつは宇宙植物怪人・ソリチュランで、毒ガスを吹きかけられ、 「さびしいかい」と言われ、女性は失神してしまう。

 そんなある日、ミライ(五十嵐隼人)は、久々の休日で散歩していた。休日なのに、 「何をすればいいかわからない」と一人でいるのか、という突っ込みはしない(笑)。 子供が大きなメロンパン*4を食べていて、 ミライも興味を持ち、メロンパンの屋台に並ぶ。と、近くで、女子高生が4人いるが、 メロンパンを食べるのに、一人、ナオコ(仲 里依紗)に金を出させようというのである。 意地汚い連中!しかも、過去にもカラオケ代など、こいつら、ナオコに出させているのである!セコイ! と思ったのは私だけではない!*5友達だから貸してくれ、というのである。

ミライ君、敢然と3人に注意すると、その3人、キモイとか、 この子がいいと言っているから、とか抜かして逃げるのである。お前らの方がキモイわい!と視聴者は思うのである。

しかし、孤独なナオコに、不思議に思う。メロンパン屋のおじさんは、 あの子は、一人になるのがいや、怖いと言う。 ミライ、そういう人間のことを不思議に思う。そして、ミライはまたナオコに会う。 さっきはすいませんと言って去るナオコ、が、ミライは、そこで異変に気づく。

 そうしていると、街中で、昼間から、女性が例の、コートの男に襲われており、 ミライは見つけて助けに入る。が、顔が植物の怪物である!逃げようとする植物人間に、 ミライはメビウスブレスから光弾を放って追いかけるが、 植物人間の毒ガスをまともに喰らって失神・・・気がついたらGUYS基地に収容されていたのである。

神経を麻痺させる物質にやられたと言う*6。ミライの、植物怪人の話、メンバーはなかなか信用しないが、 マリナ(斉川あい)は、弟が*7、そんな植物の怪物がいるという、 都市伝説を話し始める。この2,3週間である。そして、実際に失踪事件が最近多発しているのである。 サコミズ(田中実)の話では、どうやら、問題は都市伝説ではなさそうである。失踪の増え方が異常である。

 ナオコは一人であった。母親とも、携帯で話す始末である。ナオコの母親は医者で、 忙しいらしい。そんなナオコの前に、さっきの植物人間と同じ白いコートを着た男が現われる。 が、こいつは、ちゃんと人間の顔をしていた(田中 信彦*8)。

ナオコは男が具合悪そうと心配し、男は傷をしている(ミライにやられたらしい)。 孤独なナオコは、男を看病する。早く医者へ、と声までかける。

 テッペイ(内野謙太)が、ミライの体についた銀色の粉は、何らかの花粉であり、 調べて、地球にないものと分析する。花粉に含まれるソリチュア化合分*9、地球には存在しないと言う。

それを聞いて、また舌をかみそうだとずっこけるトリヤマ補佐官(石井愃一)、 しかし、こいつらが失踪にどう関係しているか、とジョージ(渡辺大輔)が言い、テッペイは、 この花粉が一定周波数の電波を跳ね返す特性を持っていることを突き止める。

それを利用して、花粉の在り処を調べたら、問題の町〜ハタノ市・モリマ山中である。 今だ、GUYS、サリー・ゴー!G・I・G

ナオコは、また例の3人にたかられてそうである。母親が医者で、 金を持っているからと言われる。そんな、孤独なナオコ、そこに、白いコートの男が現われる。 傷は治った、人間はさびしいと目から水を出す、どうしてさびしい、と声をかけるのである。 ナオコは、いつも一人ぼっちと泣く。と、男は、絶対にさびしくないところ、 友達が裏切らない、楽園だ、というところへ誘うのである。

 電波を追い、ガンフェニックスが問題の場所へ飛ぶ。テッペイが案内するが、 見た目はただの森、しかし、いやな感じ…とコノミ(平田弥里)が言うと、 小さい点を発見、そして、皆、手分けして捜すことにする。と、 ミライは、ナオコが、男と歩いているのを見る。 「人間はバラバラの心を持っている、でも、もうさびしくない」と、宇宙植物のところへ案内される。

そこには、失踪した人がみないた。植物に覆われているが、皆、孤独であり、だが、今は、 植物と一体化して、幸福そうに「見えている」*10。 「みんなで一つの心を使えば」と誘うが、と思ったとき、 ミライが現われ、止めるのだが、植物怪人は触手を使ってミライを縛り上げてしまう*11。

ミライがつけているのは、気づかれていた。男を触手が覆い、植物怪人となり、 とらわれた人たちは、「ここは楽園、みんなで一つの心を」と言い、さらに、巨大な宇宙植物怪獣、 ソリチュラとなって暴れ始める。

ミライは、同化されたら、君の心もなくなる、さびしいと感じることも出来なくなる、 と警告するが、ソリチュラは、全人類を同化するつもりなのだ*12。 ナオコは怪物の正体に気づき、やっと逃げる。

これに対して、リュウ(仁科克基)はガンフェニックスで攻撃しようとするが、とらわれた人たちがいるから、 攻撃をやめるようにミライは止める。そして、ミライは束縛を必死に破り、 メビウス(スーツアクター・山本諭)に変身した。

 メビウスとソリチュラのバトルである。神経ガスで攻撃し、植物怪獣のお約束、触手でメビウスの足を縛って、 これで持ち上げて攻撃するソリチュラ、しかし、ガンフェニックスの攻撃で難を逃れ、 メビュームブレードを抜いて、ソリチュラの胴体を一刀両断にする(植物の幹が切られる)*13。 続けて、メビュームシュートを、間髪を入れず放って、ソリチュラの胴体を焼き払った。

 そして、GUYSのメンバーは捕らわれた人を解放するが、束縛された方が幸せだった、 余計なことをして、独りぼっちはいや、と言われる始末である*14。だが、ナオコは、 「そんなのダメ」と言い、「人間は誰だってさびしい、でも、さみしいことも、悲しいことも、みんな大切だ」と言う。

その言葉に、説得される人々…「いろんな人と話したい、知り合いたい、だからもう泣かない」というナオコ、 ミライは、「寂しさを知っている人は、別の誰かの寂しさに気づいてあげられる、君は、きっと強くなれる」と感じた。

ページのTOP

メビウスベルト

マニア的突っ込み

*1:今回のテーマは植物怪獣と、人間の心ですが、今回のソリチュラに関して、古くはセブン 「緑の恐怖」、平成ではティガ「永遠の命」があるものの、この手の、 植物ホラーの原点は怪獣映画「マタンゴ」(1963年)です。これは、 本多猪四郎監督、円谷英二特技監督の、黄金コンビの特撮でも異色で、ホラーの姿を借りて、 人間の醜い心を描いた名作、見たら、一人で夜、トイレに行けなくなるという代物です。

日本ではホラー映画はあまりないと言われますが、このマタンゴ、 80年代以降のハリウッドホラー映画の先駆を成すもので、この分野でも、日本は先駆者だったのです。 ぜひ、ビデオで見てください。でも怖いですよ!

*2:この変形もCGの賜物、しかし、見事なCGです。小中和哉監督は、CGの醍醐味は変形・変身 (メタモルフォーゼ)にあると語り、映画「ティガ&ダイナ」での、デスフェイサー変形場面について 「地球はウルトラマンの星」で語っていました。

*3:これも日本的な「お化け」の展開で、典型例はのっぺらぼう、泣いている人に声を掛けたら、 顔のないのっぺらぼうだった…という展開、ウルトラでも、セブン「明日を探せ」で使われています。 この話を演出した野長瀬三摩地監督が好むホラー手法で、Qでのラゴン(等身大)、ダダ(等身大) の出現シーンは和製ホラーの原点です。

*4:こういうパンを、一般にはメロンパンと言いますが、神戸では、 特にコープこうべで、この手のパンを「サンライズ」と言い、 メロンパンは中に白アンの入ったもので、別にあるのです。何か、テレビで、昔 「メロンパンとサンライズはどう違う」というのもありました。脱線、すみません・・・

*5:このように、友達(とは言えないな)にたかるというテーマは、現代的です。 私が中学・高校時代もあったことはありましたが、最近のように、 何百・何千万脅し取るなどということはありませんでした。 日本も荒廃したものです。だからこそ、こういう話を子供たちに見せるべきです。

*6:人間体で攻撃されてKOされる…というのは、情けないと言うか、 敵がすごいとこの場合言うべきか…神経ガスとは、帰マン「毒ガス怪獣出現」で、 旧日本軍の作ったガスを怪獣が吐くというシリアスな設定もありましたが、今回はテーマ的にピッタリです。

*7:マリナの弟って…隊員の家族、兄弟の話が出るのは珍しいです。そもそも、 ウルトラ特捜チームの隊員は、家族構成など不明で、 そういうプライベートな設定のないのがいい、とかつてマニアに言われ、 第2次シリーズで、主人公が家庭的な中にいるのは批判されたこともありました。 しかし、ここでは弟と言うだけで、その後が謎なのが、含蓄を含んでいていいです。

*8:ネクサスのイラストレーター、吉良沢役の田中さん、 今回は敵役で登場。28話と言い、過去のレギュラーが敵役、悪役というのが面白いです。 かつて、ウルトラに出た役者さんが、時代劇などで悪役にたくさんなっていたのを思い出します。 また、昭和の特撮SFスター、岸田森さん、平田昭彦さんも、時代劇などですぐれた悪役をやっていました。

*9:分子式が出ていますが、架空のものです。しかし、特定の周波数に反応するなど、 これは現実にもあり得る設定で、昭和ウルトラのSF設定が、21世紀にたくさん現実化 (例えば、ウルトラ警備隊のビデオシーバーも、似たものが実用化されました)されているのに、 40年の歴史の重みを感じます。

*10:こういう、植物に取り込まれる設定は、ティガ「永遠の命」のギジェラなどにありました。 植物怪獣は、こういう、不気味なのが取り柄です。

*11:触手が凶器になるのは恒例なものの、今では、CGによるリアルな描写が魅力です。しかし、 植物怪獣には気をつけよう!

*12:こういう、全人類同化、とは、ダイナ最終回、グランスフィアの企みがあり、また、 例のエヴァンゲリオンでの、人類補完計画もこれに似たものでした。 これを否定するのが、ダイナ最終回の、ヒビキ隊長の言葉です。

13:これはビックリ!切断技で、こうして真っ二つにするのは、今は規制されているものの、 今回は植物だからか、植物の幹が切られる、リアルな描写には驚きました。こんなシーン、 30年ぶりかな?さらに、即座に光線で止め、というのも、セブンなどを思わせる見事な殺陣です。

 しかし、このところ、メビウスのバトルが短い、優性なのが多くて、なかなかカラータイマーが鳴りません。 カラータイマーは、パワードなど、全話で点滅していましたから、この手の演出は、見事です。

*14:これも、助けられたら「ありがとう」が恒例であり、「さっきの方が良かった」という展開は、 昭和には考えられなかったものです。今の、病んだ時代を背景にして、リアルです。 そして、その上でナオコの成長を見せているのが、素晴らしいです。

総括的な考察

(1) 心を攻める侵略者

 今回は、孤独な人間の心に付け込み、侵略する敵を描いていました。ある意味、セブン 「狙われた町」の世界に沿っているものの、昭和にはない、人間関係の変化を利用して、 かなりリアルなドラマを描いていました。

 ウルトラでは、平成3部作など、こういう問題のない世界を舞台にしたこともありますが、逆に、 帰マンのように、公害など、現実の問題をテーマにした作品でも成功を収めています。 いわゆる、ウルトラ流の文明風刺で、この路線は、マックスで再現され、メビウスに引き継がれました。 昭和ウルトラのテーマを、別の視点から見て、今回は解決策も見せました。この点、救いのある結末は良かったです。 こういうドラマ、今の子供たちに多く見て欲しいです。

(2) 和製ホラーの要素

 「マタンゴ」の件でも書きましたが、日本では、いわゆる「ホラー」ものの成功例は比較的少なく、 そもそも、ハリウッドのホラーもののような、まあ、エゲツナイ描写は、日本では一種タブーであり、 この点、怪奇大作戦が、ホラー物でなく、刑事物に傾倒したのもこの理由によります。

 が、「怖い」描写は、ウルトラでも多々ありますが、今回もネタになったのが「等身大」の怪人という点。 つまり、そばに突然、怪物が現われたら、という怖さが、日本的な恐怖ものの本領です。  小中千昭さん、長谷川圭一さんもホラーファンで、平成ウルトラにホラーファンが加わっているのが面白いところですが。

管理人レポートページ(1) ⇔マニアレポートページ(2)

メビウスベルトTOP▲