ウルトラマンメビウス 第44話「エースの願い」ハードバージョン
監督:小原 直樹/特技監督:菊地 雄一/脚本:長谷川 圭一
メビウスマニアライターT2-0
ミライ(五十嵐隼士)が意識を取り戻した場所、そこは荒涼たる大地であった。 ミライ、アヤ(いとうあいこ)、ヒルカワ(加藤厚成)は、割れた地面から未知の空間に呑みこまれ、 この見知らぬ世界に投げ出されたのだ。何処とも知れないその世界を探索する三人は、廃墟となった都市を発見した。 そこは東京の残骸と思しき場所であった。
破壊しつくされたその街に足を踏み入れる三人。地球は滅亡してしまったのだろうか…。 絶望したヒルカワは叫んだ。「お前たちGUYSが不甲斐ないから地球が滅んだんだ!」 ミライを責め、殴打し、唾を吐きかけるヒルカワ!
そこに黒ずくめの男(清水鉱治)が姿を見せた。ヤプールの人間体である。念力でヒルカワをいたぶりながら、 人間の醜さをミライに説くヤプール。「人間とは身勝手な生き物だ」「こんな下等な人間どもをお前は守ってきたのだ」。
それでもヒルカワを助けようとするミライであったが、ヤプールはヒルカワに一丁の銃を渡し、言った。 「この銃であの男を撃てば、お前の命だけは助けてやる」と。ヤプールから銃を受け取り、 ミライに銃口を向けるヒルカワ!身を盾にしてミライを守ろうとするアヤ!!遂に放たれた銃弾は、 ミライの張ったバリアにより防がれた。だが、ヒルカワはミライを恐怖し「化け物!」と罵るのだった。 愕然とするミライ!
ヤプールの悪魔の囁きは続いた。「素直に言うがよい、人間に失望したと」。そうミライに語りかけ、 自分たちと手を組むよう勧めるヤプール。だがミライはそれを拒む。そのミライの答えを受け、 ヤプールは人間体から巨大ヤプールに変身!ミライもヒルカワの目前でメビウスに変身した!!
ヤプールは、メビウスの力の源は、仲間たちとの絆であると考えていた。だからこそGUYSを月に誘い出し、 メビウスと分断したのだ。ダメージの残る身体で巨大ヤプールに挑むメビウス!そのメビウスを、 ヤプールの容赦なき攻撃が襲う!!
一方、GUYS隊員たちを乗せたフェニックスネストは月に不時着していた。謎の力により、 エンジンおよび全システムが停止してしまっていたのだ。月面には謎の石柱があった。 フェニックスネストのシステム停止は、その石柱の干渉によるものと推察された。
その時、マリナ(斉川あい)は、何者かの声を聞いた。 至近距離から石柱に攻撃を加えることで干渉フィールドの発生を止められると言うのだ。 その声を信じ、石柱を破壊すべくリュウ(仁科克基)、ジョージ(渡辺大輔)、マリナがガンスピーダーで出撃した。 そこに地面を割って超獣ルナチクスが出現!ガンスピーダーの前に立ちふさがった!!
その頃、マリナに語りかけた者は月を見上げ、彼らの戦いを見守っていた。 「みんな、最後まであきらめるな」。それは北斗星司(高峰圭二)であった。
ヤプールの猛攻に力尽きるメビウス!倒れ伏したメビウスをヤプールは 「一人では何も守れない無力なウルトラマン」と嘲笑う!!アヤは、メビウスに向けて必死に叫んだ。 「君は私のナイトなのよ!ウルトラマンは絶対に負けない、白馬の騎士なんだから!!」しかしミライは、 ヤプールの言葉に負けようとしていた。「一人きりの僕には何も守れない。アヤさんの命も…」。
その時!ミライの心に何者かの言葉が響いた。「お前は一人じゃないぞ、メビウス」。それは北斗星司、 ウルトラマンエースからの声であった。北斗は、かつて自らが体験した大切な仲間との別れをミライに語った。
ともに苦しみ戦った一人の女性との別れ…。しかし北斗星司は、一人になっても戦い続けることができた。 それは、離れ離れになろうとも彼女の意志を感じ続けることが出来たからだ。 「たとえ離れていても、仲間たちの姿がお前には感じられるはずだ」 「立て、メビウス。仲間たちの思いとともにヤプールを倒せ!」北斗のその言葉に励まされ、 メビウスは再び立ち上がった!バーニングブレイブとなったメビウスの攻撃がヤプールを圧倒していく!!
その頃、ガンスピーダーはルナチクスをかわし、石柱へと接近していた。北斗からの助言に従い、 石柱の干渉フィールド放射中枢を攻撃するジョージとマリナ。攻撃は成功した!干渉フィールドは消滅し、 フェニックスネストは再び飛翔した。
「夕子、行くぞ!」、北斗はエースに変身!月面へと降り立った!!月面を舞台に繰り広げられる エースとルナチクスの戦い。激闘の末、エースはストリウム光線でルナチクスを撃破。
石柱も、フェニックスネストの放つフェニックス・フェノメノンで粉砕されるのだった。 そして、メビウスもヤプールに勝利していた。断末魔のヤプールはメビウスに言った。自分は 「偉大なる皇帝」に仕える四天王の一人であること、まだ、残る三人がメビウスを狙っていることを。 「破滅の未来で待っているぞ!」そう言い残し、ヤプールは消滅した。
ミライ、アヤ、ヒルカワは、元の世界に帰ることができた。無事の帰還を喜ぶヒルカワに笑顔で語りかけるミライ。 しかしヒルカワは「お前の正体を黙っておくつもりはないからな」と言い放ち、その場を立ち去るのだった。
沈痛な面持ちのミライに、月面からエースがテレパシーで語りかけた。「優しさを失わないでくれ、 たとえその気持ちが何百回裏切られようとも。それが私の変わらぬ願いだ」と。
「星司さん」、北斗星司の背後から懐かしい声が聞こえた。振り返った星司の前に立っていた者…。 それは南夕子(星光子)であった!
「もし私が地球に残っていたら、星司さんと一緒にこんな風に年を重ねていたのかもしれない」 「私もずっと、星司さんを近くに感じていた」そう語る夕子と北斗は、お互いの手のひらをそっと合わせるのだった。 戦いは終った。ミライに感謝の言葉を述べるアヤに、ミライは応えた。 「僕はあなたのナイトですから」アヤは、そんなミライの頬にキスをするのだった。
マニア考察
ウルトラマンメビウス第44話「エースの願い」は「思い出の先生」 に続き、三十余年前の忘れ物を取り戻したような気分にさせてくれる、期待にたがわぬ名編に仕上がっていました。
まずは、エースと北斗星司についてです。劇場版メビウスでは、 優しさと熱さを兼ね備えたキャラクターとして描かれ、強い印象を残した北斗星司。
今回の北斗も大奮闘!GUYSのメンバーをそっとサポートし、ミライを励まし、 最後には月面に乗り込みGUYSと共闘する北斗星司。その優しさと熱さは健在です。 今回のエピソードでは、エース主題歌のイントロに乗って変身する北斗星司を見ることができました。 続いてのエース登場シーンは旧作の映像が使われており、また、変身後の声は旧作と同じ納谷悟郎氏による声でした。 それらの旧作ファンを意識した演出は心地よいものでした。
そして、忘れてはならないヤプール。「ウルトラマンA」のメインライターである市川森一氏は、 「A」にキリスト教的モチーフを多数盛り込んでいました。そしてヤプールは、あるときは抽象的な「悪」 の象徴として、そして時には悪魔的な存在として描かれています。
今回のヤプールも、聖者を堕落させる悪魔のような役どころが与えられており、ヤプールらしさを感じさせるものでした。 ヒルカワのキャラクターも、昭和ウルトラに時々登場絵するエゴの強い人間を思わせるものです。 平成以降のウルトラは人間のエゴを描くことを意識して控えていたように感じられます。 そんな中で、このヒルカワのような人物が登場したこと、特に「仲間との絆」をストーリーの軸としている 「メビウス」でこのような人物が描かれたのは、意外であり、また面白いと思いました。
もちろん、そのヒルカワはミライを取り巻く様々な人々の「絆」 を強調するための対比として設定されたキャラクターです。その意味では、 その役割を十二分に果たしたと言えるでしょう。
今回は「GUYSとミライ」「ミライとアヤ」「北斗と南」といった、いくつもの絆が描かれています。 北斗の言葉に勇気付けられ、「心はいつも仲間たちと繋がっているんだ!」 とヤプールに挑むメビウス!それに続く北斗の変身!そして月面でのGUYSとエースの共闘!! この一連の場面はヒーロー番組の王道とも言える展開で盛り上げてくれました。
南夕子については、劇場版での出演がありませんでした。 それだけに今回の北斗との競演はファンにとって本当に嬉しいものとなりました。 「南夕子は月星人だった」という設定は「ウルトラマンA」の中盤で南夕子を降板させるため、 急遽設定されたもののようにも感じられます。しかし、そのような旧作の設定をしっかり尊重し、 現在の番組中で後日談として最高の回答を見せてくれるメビウスのスタッフの素晴らしさ! その技量と愛情に感謝したいと思います。
劇中で北斗星司がミライに言う「優しさを失わないでくれ、たとえその気持ちが何百回裏切られようとも。 それが私の変わらぬ願いだ」は、やはり深いものがあります。第36話「ミライの妹」 でも使われたこの言葉、原典はウルトラマンA最終回「明日のエースは君だ!」で、 地球を去るエースが子どもたちに語りかけた言葉です。この言葉は、原典から一部変更されています。 「それが私の最後の願いだ」という部分が「それが私の変わらぬ願いだ」になっているのです。
この言葉の深さは、その言葉の正しさと共に、それを実践することがいかに難しいかを感じさせる辺りだと思います。 他者と共存すること、そして他者を許すという「理想」、そして、それを行うことが難しいという「現実」。 幼い頃にこの言葉を聞いた僕は、「大人になった今、自分はこの『願い』を果たせているだたせているだろうか?」 と自問していますし、そのように感じるウルトラファンは多いのではないでしょうか。 だからこそ北斗は「変わらぬ願い」と言ったように思えてなりません。
そして僕は、ヒルカワは我々の一面を強調して描かれたキャラクターであると感じています。 極限状態に置かれたとき、エゴを完全に抑制できる人間は少ないでしょう。いや、極限状態に限りません。 人間は、その行為に正当性さえ与えられれば、容易に暴力を振るったり、他者を傷つけてしまえる存在だからです。
そう、エース最終回の冒頭では、ウルトラ兄弟のお面をかぶった子どもたちは「正義」の名の下に非力なサイモン 星人を苛めていました。 「我々は、あの子どもたちやヒルカワと全く別の存在と言い切れるのか?」 ヤプールやヒルカワの登場と絡めて、改めてエースの「願い」が語られる裏側には、 おそらくはそのような問いかけが含まれているはずです。
そのようなヘビーな展開を見せながらも、今回のエピソードの幕切れは爽やかです。それは「絆」 の勝利が描かれていたこと、そして清々しい二組のカップル「ミライとアヤ」、そして「北斗と南」の描写で ラストが締めくくられたことが大きいでしょう。 天の川を背景に再会する北斗と南、7月7日生まれと設定された二人の三十余年ぶりの再会は、 正に織姫と彦星の再会のようです。そして、北斗の語った 「離れ離れになっていても、彼女の意志がずっと生きていた」という言葉と、夕子の語った 「もし私が地球に残っていたら、星司さんと一緒にこんな風に年を重ねていたのかもしれない」 という言葉は、番組としての「ウルトラマンA」内では示されることのなかった 「北斗と南はお互いをどう思っているのか?」という疑問に答えるものだったように思います。
「私もずっと星司さんを近くに感じていた」、短く、そして磨きぬかれたセリフの数々に感激させられ、 泣かされ続けた30分でした。
最後にウルトラマンA第14話「銀河に散った5つの星」ラストシーンでの北斗と南の会話を紹介したいと思います。 強敵であるエースキラー、バラバとの戦いを終えた北斗と南が、天の川を見上げながら交わした会話です。
北斗「一年に一度、あの天の川で牽牛と織姫が会うんだね」
南「牽牛と織姫って恋人同士なの?」
北斗「うん」
南「そう…、私たちは一体何なのかしら…」
夕子の少し切なげな表情と、その言葉に戸惑ったような北斗の表情の対比が印象的な場面でした。 スタッフが(あるいは脚本の市川氏が)、北斗と南に恋愛ものとしての可能性を感じていたことがうかがえる場面です。
「北斗と南」の設定を好ましく思っていたファンにとっては、そのような可能性が夕子の退場により消滅してしまったことは、やはり惜しまれることだったのです。今回のエピソードで北斗と南の再会を見れたことは、「北斗と南」のファンにとっては本当に嬉しいことでした。そして、二人が手を重ね合わせるウルトラタッチを思わせるシーンの清々しさ。このシーンには多くのファンが涙したのではないでしょうか。 40年にわたるウルトラシリーズの歴史を踏まえ、こうして新しい物語を構築していく…。そして、それが非常に丁寧に成されておりファンに違和感を覚えさせないことの巧みさ。メビウスって本当に素晴らしく、贅沢なシリーズだと感じています。
「ウルトラマンメビウス」、残り話数もわずかのようですが、最後まで応援していきますよ。 こうして、新しいウルトラが紡がれる瞬間に立ち会い、楽しめることを本当に幸せに思います。 頑張れ、メビウス!!