ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス 第45話「デスレムのたくらみ」マニア考察】

ウルトラマンメビウス 第45話「デスレムのたくらみ」マニア考察ハードバージョン

【メビウスライター 帰りマン&ティガ命】

シリーズ構成:赤星政尚、設定考証:谷崎あきら、脚本:太田愛、監督・特技監督:村石宏實

月で時空波の発生源である石柱を破壊し、フェニックスネストで地球に帰還しようとしていたGUYSのメンバーたちに、 ミサキ総監代行(石川紗彩)がモニター画面を通じて、タケナカ最高総議長がニューヨークへ、 そしてアヤが神戸に帰ったことを告げ、さらにミライ(五十嵐隼士)が待っていることも伝えた。

フェニックスネストの帰還を滑走路上で待つミライ・・マスコミもまたフェニックスネストの帰還を待っていた。 そのフェニックスネストが滑走路に近づいてくるが、謎の光に包まれて爆発する。 ジープに乗っていた郷秀樹(団時朗)は、車を止めて街にある大画面を心配そうに見つめる。

街の人々は奇跡的に生還したジョージ以外のGUYSのメンバーたちが死んだと思い、悲しがる。 ミライは仲間たちの死が信じられず、それはミサキ総監代行も同じであった。二人がただ一人の生存者のジョージ (渡辺大輔)のところへ行くと、ジョージは、仲間たちが四天王の一人であるデスレムに捕えられていて、 さらにデスレムはこの地上でのメビウスの完全なる敗北を望んでおり、それが仲間たちを返す条件であると伝える。 ジョージだけ生還したのは、デスレムのメッセージをミライに伝えるためであった。

空からデスレムが降りてきた。デスレムは空から火炎弾を落とし、街を破壊する。ミライはメビウスに変身するが、 仲間たちのことを考えてまともに戦うことができない。ジープで近くまできた郷秀樹は、空を見上げ、 球形物質に閉じ込められているフェニックスネストを見つけ、それをメビウスにテレパシーで伝える。

メビウスは全く何もできず、街の人々から非難される。ジョージが駆けつけ、メビウスをサポートしたが、 結局メビウスはそのまま敗北。デスレムは次の機会を楽しみにして去っていった。 *このシーンで、TVでは初めてミライとデスレムから「ジャック」という名前が呼ばれた。

メビウスはミライの姿に戻るが、痛みからその場でうずくまる。ジョージは心配そうにミライのところへ行く。 そこへマスコミや街の人々がやってきて、うずくまるミライを非難する。 ミライが仲間たちは人質に捕えられていることを告げると、仲間の命の方が市民の命よりも大事なのか、と非難される。

このことは新聞でも取り上げられる。街中のきくち電器商会の社長(きくち英一)は、 マスコミの勝手な報道に怒りを感じていた。ミサキ総監代行もマスコミに問い詰められる。 ミライは、GUYSクルーが人質となったことを非難する人々の反応に、「一体僕たちは何のために戦ってきたんだ」 と悔しがる。

その頃、四天王の3人、メフィラス星人、グローザム、デスレムは語り合い、デスレムは勝利を確信していた。

フェニックスネストの中では、サコミズ隊長(田中実)とリュウ(仁科克基)が負傷し、マリナ(斉川あい)、 テッペイ(内野謙太)、コノミ(平田弥里)の手当てを受けていた。 サコミズ隊長は、デスレムは自分たちのせいで戦えないメビウスを見せつけて 人間とメビウスの間の信頼を叩き壊すつもりだ、と言う。リュウは途中まで言いかけて口ごもるが、 マリナは帰れなくてもいいと思っているリュウの気持ちを代弁し、自分も覚悟はできていると言う。 コノミやテッペイも覚悟はできていると言い、テッペイの提案で自分たちの気持ちをミライに伝えるべく、 あらゆる周波数帯で電波を発信することになった。

夜、ジョージはミライに、子供の頃ウルトラマンになることが夢で、 この地上で懸命に生きている人たちのささやかな幸せを守りたかったことを語り、 「難しいんだな、守るってことは・・」と言った。

次の日、ミライはジープに乗ってやって来た郷秀樹に、仲間たちを助けられなければ、 自分自身と人間の両方を許せないかもしれないと、自分自身が怖がっている心境を話す。 そんなミライに郷は、「人間を愛するには、人間を知らなければいけない。人間の強さも弱さも、 美しさも醜さも・・」と語る。

デスレムが再び降り立った。ミライもすかさずメビウスに変身する。デスレムは、 捕えたフェニックスネストを人々にも見えるようにする。人々は人質になったGUYSのメンバーたちを非難する。 デスレムは「お前には何一つ救えない。」と言い、空から次々と火炎弾を落とす。 メビウスは自分が盾となって、人々を守ろうとする。

きくち電器商会では、社長がアマチュア無線でフェニックスネストからの電波を受信する。 社長はテレビ局に連絡し、テレビ局の中継車が店に駆けつける。

何もできないメビウスに、街の大画面モニターのスピーカーを通してリュウの声が流れる。 「俺たちのことはいいから、人々を守るんだ。GUYSクルーの心は一つだ・・」 リュウの言葉に、きくち電器商会の社長は涙ぐむ。 人々は今までGUYSが自分たちを守ってくれたことを思い出し、 メビウスにGUYSの人たちを助けてくれ、と口々に言う。

デスレムに向かっていくメビウス・・デスレムは火炎弾をフェニックスネストにぶつけようとする。 郷秀樹はウルトラマンに変身。(本放送時と同じ効果音が流れる)ウルトラマンは、 両腕をクロスさせて火炎弾の連続攻撃からフェニックスネストを守る。 きくち電器商会の社長は、「ウルトラマンが帰ってきた。」と喜ぶ。

メビウスはバーニングブレイブにタイプチェンジし、一気にデスレムを攻撃する。 ジョージはミサキ総監代行の許可をもらい、メテオールの立方体バリアで人々を守る。 メビウスはメビュームバーストをデスレムに放つ。 帰ってきたウルトラマンもスペシウム光線を放ち、デスレムは爆発する。

フェニックスネストを地上に降ろし、ウルトラマンは飛び立っていった。 帰ってきたGUYSメンバーたちを、ミライは涙ぐみながら迎える。 きくち電器商会の社長も、涙ぐみながら部下と共にそれを見つめる。 また郷秀樹は遠くでその様子を見守り、「GUYSという家があり、仲間がいる」と言い、ジープに乗って去っていった。 郷秀樹が去る時、ジョージは何かを感じていた。

ウルトラマンマニア考察&過去のウルトラ作品とのリンクポイント

1.帰ってきたウルトラマンという作品について

帰ってきたウルトラマンは、1971年4月にスタートした番組ですが、「帰ってきたウルトラマン大全」と「帰ってきた 帰ってきたウルトラマン」という2冊の解説本(いずれも円谷プロ監修)によると、当初は初代マンが帰ってくるという設定であり、企画書にも「続ウルトラマン」と書かれていた時期がありました。ところが、同じデザインにすると版権営業上問題が出る、ということで放送開始近くになってデザイン変更されたそうです。赤い模様の外側にラインが入るようになったのも、この時のデザイン変更によるものです。

その後、ブラックキングとナックル星人に敗れて磔にされた帰りマンを、初代マンとセブンが救出(38話)したことで初代マンとは別人であることが明確になるのですが、番組の雰囲気も初代マンとは全く異なりました。帰りマンにおいては、主役の郷を中心とした人間ドラマの色彩が強く出ていました。郷秀樹は笑い、悲しみ、人を愛し、悩み、苦しみ・・といったように本当に一人の人間としての喜怒哀楽が出ていました。まさに最初の「人間ウルトラマン」と言うべきものであり、これが今の平成シリーズにも脈々と受け継がれていると思います。

2.きくち英一さんと大滝明利さん

今回、きくち電器商会の社長役を演じたきくち英一さんですが、帰ってきたウルトラマンのスーツアクターだった方です。今回の「ウルトラマンが帰ってきた。」と言う場面は、きっとご本人にとっても感慨深いものがあったのではないでしょうか。なお、きくち英一さんは帰りマン最終話でもMATの係員として登場しました。

また、ティガのムナカタ副隊長や劇場版コスモスでヒジカタ参謀を演じた大滝明利さんが、 一般市民の一人の役を演じました。(大滝明利さんは改名し、今は瀧佳人という名前になっています。)

3.二つの固有名詞(「ウルトラマン」と「ウルトラマンジャック」)

このサイトでも話題となった帰りマンの名前ですが、今回TVで初めてミライとデスレムによって 「ジャック」と呼ばれました。その経緯は掲示板にも書かせていただきましたが、 エースの命名と大きな関係があります。 当初エースは「ウルトラエース」となるはずでしたが、 同名で商標登録されていた玩具が存在していたことから、 急遽「ウルトラマンエース」に変更されます。その結果、 「ウルトラマン」は固有名詞から普通名詞へと変わってしまいました。

そして本放送時点からだいぶ後の1984年の劇場版「ウルトラの戦士VS大怪獣軍団 ウルトラマンZOFFY」からジャックという名前が使われるようになりました。それまでは、 「二代目ウルトラマン」とか「新マン」とかで呼ばれており、帰りマンは初代マン同様、 「ウルトラマン」という固有名詞を持った戦士でした。 ジャックという名前が付けられたのは、まさに「ウルトラマン」が固有名詞から普通名詞に変わったことの象徴でした。

ジャックという名前がつけられたのは、帰りマンにも名前をつけようとしたからですが、 本放送開始から13年もたっていたこともあり、この名前になじめないファンも多くいます。 ニ代目ウルトラマン、ウルトラマンU世、新マン、帰マン、帰りマン、ジャックというように、 これほど多くの名前を持つウルトラマンは彼だけです。

今回の「ウルトラマンが帰ってきた。」というセリフは、「帰ってきたウルトラマン」 という番組タイトルとのリンクと、リアルタイム世代を中心に「ウルトラマン」という固有名詞に慣れているファンへのサービスでもあると思いますが、考えてみると、ジャックと命名されていることを、ウルトラの世界観の中の一般大衆が知っているはずがありません。なぜなら、彼が地球で戦っていた時、彼は「ウルトラマン」という固有名詞で呼ばれていたわけですから・・今回の話では「ジャック」という名前を明確にした一方で、彼はウルトラの世界観の中で、一般大衆にとっては相変わらず「ウルトラマン」という固有名詞で認識されていることも明らかになりました。二つの固有名詞が同時に尊重され、認知されたと言えるかもしれません。

4.郷とウルトラマンの意識の一体化

その帰りマンに変身する郷秀樹ですが、ミライとは異なり、元々地球人です。ところが、 劇場版も含めて人間としての郷秀樹というよりも、 ウルトラマンそのものであるかのように感じられるセリフが多く見られます。 この現象は帰りマン本編の中でも見られ、しかも後半になるにつれて強くなります。このことから、 私自身は郷秀樹の意識と帰りマンの意識が次第に融合していったのではないか、と推察しています。

5.スペシウム光線とウルトラVバリヤー

今回、帰りマンはスペシウム光線でデスレムに止めを刺しました。また、腕をクロスしてフェニックスネストをデスレムの火炎球から防御した技は、ウルトラVバリヤーと呼ばれていて、帰りマン4話でキングザウルスV世のビームを防いだり、最終話でゼットンの一兆度の火の球を防ぐのに使われました。今回はウルトラブレスレットの使用はなく、残念に思った人もいるかと思いますが、劇場版ではUキラーザウルス・ネオとの戦いにおいては、確かにブレスレットが武器として使われていました。

6.郷秀樹が背負った苦しみ

今回、ミライは仲間を人質に取られたことにより、危機的状況に陥りましたが、メビウスをサポートした郷秀樹自身、過去に同様の苦しみを背負っていました。代表的な例を二つほど、あげてみます。

(1)命の重みの天秤
今回、ミライは仲間の命を優先するか、市民の命を優先するのか、という状況に置かれました。かつてMATにおいても、グドンやツインテールとの戦いで、岸田長官の命令で小型水爆と同じ威力を持つスパイナーの使用が実行されようとしました。(帰りマン6話)この時、郷の恋人の坂田アキが負傷していて病院から動けず、スパイナーが使用されれば、坂田アキの死にもつながるものであり、郷は苦境に立たされました。

(2)人間の弱さと醜さ
人間の弱さと醜さ、そしてそれに対する不信感・・まさにあの「怪獣使いと少年」(帰りマン33話)に見ることができます。良少年が虐待され、メイツ星人の金山は警官によって射殺され、その死によって、金山が封じ込めていた怪獣ムルチが出てくるのですが、これは人間自身が巻いた種であり、郷は戦意を失います。この時、雲水に変装した伊吹隊長の言葉で、郷はムルチに立ち向かいますが、すさまじいまでの問題提起となりました。

7.フェニックスネストに残されたGUYSメンバーたちの思い
今回、メビウスを救ったのは、GUYSの仲間たちの死を覚悟した思いでした。自分たちはどうなってもいいから、街の人々を守って欲しい・・そしてメビウスを苦境から救いたいという思い・・GUYSのメンバーたちのメッセージを聞きながら、きくち電器商会の社長は泣いていましたが、自分自身もたまらない気持ちになりました。GUYSのメンバーたちには自分の命も大事にして欲しい、と思った反面、その心情には強く心を打たれました。

8.ジョージの思い
一方、一人で先に戻されたジョージですが、子供の頃の夢はウルトラマンになることでした。それも、単にウルトラマンとなって怪獣や宇宙人たちを倒したいと思ったのではなく、この地上で懸命に生きている人たちのささやかな幸せを守りたい、という暖かな気持ちからであり、ジョージの優しさがよく出ています。

9.ちょっとした過去とのリンク
(1)ジープ
今回、郷秀樹はジープに乗って登場しましたが、かつてのMATチームもよくジープを使用していました。ジープを使った戦闘シーンは、何となく頼りなくも見えるのですが、その反面、ものすごくリアルであり、ジープに乗る郷秀樹からは、歴代防衛チームの中でも特にリアルであったMATチームの空気を感じることができました。

(2)KCB放送局
今回放送を流したKCB放送局ですが、ガイアで藤宮を支えた吉井玲子アナウンサーが所属した放送局もKCBでした。KCBは、KANTOH Community Broadcasting Station ,LTD(関東コミュニケーションテレビ)の略です。

10.最後に
今回の市民の反応、正直言って怖さも感じました。人質になるのが悪い、というのは、あまりにもひど過ぎるものでした。「自分さえ良ければ・・」という価値観は、まるで前話のヒルカワのようであり、ミライにとってはジョージが言っていたように、人を守ることの難しさ、そして信頼関係の脆さが突きつけられた形となりました。郷秀樹は過去において、今回のミライと同じような辛さを味わっていました。「人間を愛するには、人間を知らなければいけない。人間の強さも弱さも、美しさも醜さも・・」という郷秀樹の言葉は、重みがあると共に、非常に考えさせられます。

テレビで帰りマンが登場するのは、本当に久し振りですが、短いながらもいい見せ方をしてくれました。ファンとしては本当に嬉しい限りです。 最後のシーンで、郷秀樹が「GUYSという家があり、仲間がいる」と言いましたが、彼自身も坂田家の人々という家族に等しい大切なものを持ち、またMATの隊員たちや、窮地を救ってくれた初代マンとセブンという仲間もいました。彼は、そのうちの坂田兄妹という大切なものを失いましたが、そんな彼だからこそ、家や仲間たちの大切さを強く感じているのだと思います。本当に信じ合えることの大切さ、そして大切な人たちとの時間は本当に貴重なものであることを、感じさせてくれる言葉でした。

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