ウルトラマンメビウスのファンサイト・メビウスベルト【ウルトラマンメビウス最終三部作V「心からの言葉」マニア考察】

ウルトラマンメビウス最終三部作V「心からの言葉」ハードバージョン

メビウスマニアライター 棺桶のジョー

1年間続けてきたマニアルポですが、今回は、ポイントをかいつまんで解説します。

(1) ウルトラマンと人間の生命

 今回、リュウが撃墜された後、ウルトラマンヒカリによりリュウは救われました。これは、初代マン第1話、そして最終回で行われた、「命」の譲渡・預ける、というテーマを、主人公以外の隊員にも広げたものです。このやり方は、ウルトラマンの命、人間の命というテーマで、多くのマニアが、初代マンを中心に、ウルトラの生命について考証を繰り広げました。

ウルトラマンが死んでも、安易に命が与えられて生き返るパターンがかつて批判されたこともありますが、今回は、リュウを介して、ヒカリの命の伝達が行われました。これを活かすために、メビウスそのものは人間に直接変身の設定が活用されました。いやはや、ここまでウルトラの、過去の設定を研究し尽くして、新たな可能性を見つけたメビウスのスタッフ、特に設定考証の谷崎さんに脱帽です。

(2) ウルトラマンのパワーアップ・M78星雲編

 過去のウルトラマンでは、パワーアップは昭和の場合、ブレスレット武器の追加(帰マンのブレスレット、エースでは1回ながらウルトラコンバーター、タロウのキングブレスレット、レオのウルトラマント)により行われました。平成では、光の力を強める(グリッターティガ、ガイア・スプリームヴァージョン、コスモス・エクリプス)ことによるパワーアップでしたが、マックスでは再びブレスレット的なもの(マックスギャラクシー)になりました。

 今回の強化は、ウルトラマンキングから授かったナイトブレスの力と、仲間達の光を加えたものであり、つまり、強化パターンとして、昭和・平成の集大成です。メビウスの最終形態・フェニックスブレイブは、地球人の力+光の力であり、グリッターティガ、ガイアスプリームの最終形態、そういう平成の要素も見せてくれました。ここには、ティガの最終回で、子供たちの光による大反撃が、安易との批判もあり、賛否両論であったため、今回は、複数の要素を加えたものです。この、メビウスのパワーアップには、地球の人々の意図もあったはずです。

 また、暴力で攻める強敵に、武力ではなく、友情と信頼を基にしたもので立ち向かう、暴力が正義と言う風潮が、世界的に強まる21世紀に、正義とは、本当は、相手をいたわる気持ちであるということを貫きました。これこそ、ウルトラシリーズの各作品が求めたもので、素晴らしい結果です。

(3) ウルトラ兄弟たちの総結集

 ウルトラ兄弟が一同に介するのは、エース、タロウの第1話であったものの、最終回にウルトラ兄弟、一族が出てくるのは、意外にも初めてです。しかし、最強の敵・エンペラ星人との決戦に臨んだのは、メビウスと、ゾフィーのみでした。予告編で、ウルトラ兄弟たちが光線を放つシーンが出たので、きっと、全員揃って大合体光線、と思った人もいると思いますが、ウルトラ兄弟たちは太陽を再生させることに尽力し、エンペラ星人との決戦はメビウスと、長兄のゾフィーに任せています。これは、最新のヒーローに大役を担わせて、かつ、助太刀も必要最小限に、という配慮でしょう。心憎いばかりで、さらに、ウルトラ兄弟たちの人間体が一言ずつ隊員たちを励ます、過去にないウルトラ兄弟の活躍であり、ヒーローの共演に工夫を凝らしたメビウスの、総結集です。アストラも出てきたし、何より、ゾフィーの飛行シーン、腕を重ねた、初代マンと同じ形(セブンの、腕を広げるものではない)でやってくれたのは感激物でした。

 ウルトラ兄弟という要素は、私の年代からすると、毛嫌いするものも少なくありません。私も、実を言うと、かつてはウルトラ兄弟の展開がきらいでした。それは、新ヒーローを目立たせるために、かつてのヒーローが安易にやられること、すぐに助けに来るので面白くないこと、などがありました。しかし、メビウスでは、ヒーローの共演を大切にして、どの世代のファンにも受け容れられるウルトラ兄弟の設定を形成しました。これは、大変なことです。

 そして、メビウスはウルトラ兄弟の仲間入りとなりました。これは、ヒーローも苦労して成果を上げて一人前になるという展開であり、かつて、80が、活躍によってはウルトラ兄弟に入れる云々言われて、結局この展開は無視されてしまったこともありましたが、本当に、ファンに喜ばれるウルトラ兄弟の設定が確立されたこと、これは大変なことです。

ウルトラマンメビウス マニア的総括

(1) 第2次シリーズ以降に光を当てたこと、

 メビウスを1年見てきて、ともかく、今まで、ウルトラシリーズの評価にあった (今も根強い)第1次シリーズ至上主義を崩して、第2次シリーズ以降の要素に文字通り光を当てたことは大きいです。

 平成のウルトラでは、ティガで、ともかく16年の時を経て、1からのやり直しに近く、 そのため、何が何でも成功させるため、第1次シリーズ、と言うより、セブン、初代マンの様式を貫徹して、これが成功したため、第2次シリーズの要素は、ワンダバBGMなどにはあったものの、ストーリー、設定では取り入れられませんでした。そのため、フィギュア類も第1次シリーズを中心に展開され、第2次シリーズ以降は後回しでしたが、メビウスにおいて、ウルトラ兄弟、一族の設定を、しっかりした形で展開したため、第2次シリーズ以降の要素の再評価になりました。例えば、「思い出の先生」にて、80という、ある意味不幸な作品に救済的な解釈を施したのは画期的であり、ヒーローの共演も、どの話も見事でした。

 フィギュアも、帰マンの怪獣が最近、出ています。この要素が続けば、ウルトラシリーズ全体の評価を高めます。過去の作品を知らない人も、ビデオ、DVDで見てみよう、そういう気分を喚起できたのは大きいです。

(2) 1年間のドラマを展開したこと

 もともと、ウルトラは1話完結で、シリーズ共通の敵も存在せず、オムニバス的なものでした。しかし、平成では、1年間を通した流れを作り、最後に最強の敵との決戦を持つ形が定着しました(マックスは例外ですが)。

 その中で、メビウスは、1年通じて、シリーズの起伏に富んでいて、序盤のボガール編、ウルトラマンヒカリ登場、ヤプール復活、伏線が次第に明らかになり、ウルトラ一族のゲスト出演で最後を盛り上げて、クライマックスを決める形を取り、また、作品に謎を入れても、ちゃんと解いて終わる〜これを、ちゃんとやった作品は、アニメ・特撮を通じてほとんどない!〜形で、1年の大河ドラマとして完結しました。これも、素晴らしいことです。

 96年、ウルトラマンティガの登場により、平成特撮ヒーローブームが起きました。その後、仮面ライダーも復活し、一時は「イケメンヒーロー」ブームも起こりましたが、様々な要素を加えて、この10年、特撮ものは進化・発展しています。2006年は一時、週に6作も特撮ヒーローものがありました。正統派の作品をシリーズとして確立し、単発的に、実験的な作品(昨年、深夜に放映されたライオン丸Gなど)を含めて、個性的な作品が並んでいます。

ウルトラの歴史では、10年間、部分的な中断をはさみつつも、シリーズが続いた歴史は、昭和にはありません。今の特撮ヒーローブームは、第1次ウルトラシリーズ時の怪獣ブーム、第2次シリーズ時の変身ブームをはるかに超えるもので、量的にはともかく、質的には、現在の特撮ヒーローブームは最高水準にあると思われます。何しろ、ウルトラマンも、仮面ライダー&戦隊も、テレビシリーズに加えて、年1回劇場用のオリジナル長編新作が上映されるなんて、昭和にはなかったことです。

 メビウスでウルトラは一旦中断しますが、この10年で開拓された路線の可能性は大きく、今後、近い将来に新たなウルトラ作品の登場は確実です。間もなく始まる怪奇大作戦・セカンドファイルはその予兆であり、幾世代をも魅了していくウルトラは、まさにメビウス(無限)となりました。

 このような素晴らしい作品を作り出されたスタッフの皆様に、心より感謝します。

 

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